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沖縄タイムス 2015年11月11日
求職者に対し、職業の紹介や就職支援などをするハローワーク=那覇市(省略)
ハローワーク(HW)の窓口で、失業者の就職相談に対応しているHW職員自身もまた失業の危機に直面していた−。非正規職員の雇用契約が切れる年度末のたびに現れる、HWの「春の風物詩」(非正規職員)とも皮肉られる光景だ。
「官製ブラック企業」 沖縄ハローワーク職員、7割非正規
全員が単年度契約。次年度に誰が残り、誰が雇い止めに遭うか−。限られた定員をめぐる年度末の公募試験は、一般求職者と一緒に受けるため、倍率は3倍前後。「まるで椅子取りゲーム」と、県内HWで働く女性の非正規相談員は語る。「職場の誰かが公募を辞退してくれれば、自分は次年度も残れるかもしれない。いけないと分かっていてもそう思ってしまう。職場の空気は悪く、本当につらいです」
別の女性相談員は、年度末が近づけば「落ち着かない気分」に襲われる。雇い止めに備えて自身の再就職先を探しながら、笑顔で失業者の相談にも応じなければならない。「相談者に『公務員は楽でいいよね』と皮肉を言われることもよくあります。そんな時どうしようもない気持ちになる」。毎年1〜2割の同僚が公募に落ちて職場を去り、送別会の準備に追われる。
公募に筆記試験はなく、面接が中心だ。なぜあの人が受かり、あの人が落ちたのか。働く側にとって合否の基準は「よく分からない」のが実情で、常に「公募に関わるかもしれない上司(正職員)の顔色ばかり気にしてしまう」という。
「雇用情勢が改善しつつある」とし、2013年から厚生労働省は相談員数を削減する一方だ。ある男性相談員は「頑張って失業者を減らせば減らすほど、自分の雇用が危うくなる。正直、矛盾を感じます」と吐露。沖縄労働局が企業に正社員を増やすよう要請しているのを見ると「しらける」気分になる。「税金で雇われている以上、みんなを正規雇用化しろとは言いません。でも私たちは都合よく使い捨てできるモノじゃない。人として扱ってほしい」
【解説】「旗振り役」足元に穴 自ら率先して改善を
県内の非正規雇用率は全国ワーストの44・5%。その改善を民間企業に呼び掛け、正社員化を促してきた「旗振り役」の沖縄労働局自体の非正規率の異常な高さが明らかになった。
窓口で求職者の就職を支援する相談員の大半が非正規だ。窓口対応の質低下を懸念する声もあるが、労働局の担当者は「給与水準は県内の賃金相場より高く、有資格者の専門相談員も多い。“任せられる人”ばかりだ」と自信を見せる。
ただ、実際に現場で働く非正規相談員からは不満や不安の声が噴出する。労働局は「魅力ある職場づくり」「人材育成」の重要性を掲げ、民間企業に「雇用の質の向上」を働き掛けてきた。正規雇用化のメリットも最も熟知する立場にいるはずだが、それとかけ離れた働かせ方をしている。
2013年度末には、予算削減で全国的に非正規相談員が大量解雇された。情勢に応じて単年度ごとに労働者を削減したり、増やしたりする働かせ方は、非正規相談員を都合のいい「雇用の調整弁」としてしか見ていないのと同じだ。
労働局は「国機関に正職員化の仕組みがない」などと強調する。しかし、制度上の「できない」理由ばかりを挙げて、そこで思考停止していては何も変わらない。働く者の立場に立ち、まずは自らが率先して改善していく姿勢を県民に示さなければならない。(政経部・大城志織)