東京大であったシンポジウムで講演する高橋幸美さん=21日、東京都文京区(写真省略)
「どうかみなさんの力で、日本が先進国と言われるにふさわしい、誰もが健康に働いて幸せになれる社会を実現してほしい」――。過労自殺した電通の高橋まつりさん(当時24)の母、幸美さん(54)が21日、まつりさんの後輩である東京大の学生らにこう訴えた。
まつりさんは東大文学部を卒業後、2015年4月に電通に入社。同10月以降に業務が大幅に増え、この年のクリスマスの朝に、都内の女子寮で投身自殺した。心理的負荷による精神障害で過労自殺に至ったと認定された。
東大の学生団体が主催する「新しい働き方」を考えるシンポジウムで、幸美さんは約200人を前に、「東大生にとって、目標に向かって努力するより、立ち止まることの方が強い決意が必要かもしれないが、正常な判断ができるうちに休んでください」などと呼びかけた。
EU(欧州連合)諸国では、終業と始業の間に一定の休息時間を設ける勤務間インターバル制度の法制化などが進んでいることにも触れ、「日本の労働環境の法制化も先進国基準にしてほしい」と語った。
幸美さんの代理人の川人博弁護士も講演し、東大出身の官僚や技術者が過労死に追い込まれたケースを紹介。「東大を卒業した若者の過労死は決して珍しくない」と話した上で、「過労死をなくすためには、業務量の削減と人員配置を適正にすることが重要だ」と指摘した。