裁量労働制 異常データ、新たに233件 加藤厚労相

 裁量労働制に関する厚生労働省の調査データに異常値が含まれていた問題を巡り、加藤勝信厚労相は26日の衆院予算委員会で、新たに233件の異常値が見つかったと明らかにした。これまでの分を加えると300件を超えた。安倍晋三首相は調査データそのものは撤回しない考えを示したが、調査の信用性は失われつつあり、野党側は、この調査に基づいて作成された働き方改革関連法案を撤回するよう要求した。
 新たな異常値が発見されたのは「2013年度労働時間等総合実態調査」。加藤氏によると、1日の残業時間が「最長でもゼロ」の人で、1週間や1カ月の残業時間がゼロではなかった事例が233件あった。加藤氏は「常識的に考えてあり得ない」と認めた。立憲民主党の長妻昭代表代行の指摘で判明したという。
 また同調査で、企画立案などをする「企画業務型」の裁量労働者の42件について1日の労働時間が「2時間以下」と記載されていた。加藤氏は「あまりにも短く違和感を感じる」とし、確認する考えを示した。長妻氏は「データの信ぴょう性に問題がある。厚労省の審議会に法案の議論を差し戻すべきだ」と追及した。
 同調査ではこれまでに93事業場で100件超の異常値が発覚し、厚労省が1万件超の全データを精査している。加藤氏は「(精査期間が)あまりに長いようなら、ある程度の数で判断する」と結果の公表を前倒しする可能性を示唆。全国の労働基準監督署が行った同調査の実態について「署レベルで実際はどうだったか把握したい」と強調した。
 一方、基準の違う一般労働と裁量労働の労働時間を比べたデータが15年に作成された経緯に関し、加藤氏は自ら担当職員に聞き取りをしたと説明。「特段不自然なところはなかった。第三者による調査は必要ない」と述べた。
 首相は不適切なデータ比較について「答弁は撤回したがデータ自体は厚労省が精査している」と述べ、同調査データの撤回は拒否。働き方改革法案を今国会に提出する方針を変えない意向も改めて示した。【光田宗義、市川明代】

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