「大企業・親事業者の働き方改革に伴う下請等中小事業者への『しわ寄せ』防止のための総合対策」(6/26)

 「大企業・親事業者の働き方改革に伴う下請等中小事業者への『しわ寄せ』防止のための総合対策」を策定しました 

 〜厚生労働省・中小企業庁・公正取引委員会 が連携し、大企業等による「しわ寄せ」防止を徹底〜
                          令和元年6月26日
 
 中小企業庁は、本日、厚生労働省と公正取引委員会とともに、「大企業・親事業者の働き方改革に伴う下請等中小事業者への『しわ寄せ』防止のための総合対策」(しわ寄せ防止総合対策)を策定しましたので、お知らせします。 厚生労働省・中小企業庁・公正取引委員会では、令和2年4月からの中小企業への時間外労働の上限規制の適用に向け、緊密な連携を図りながら以下の取組を実施していきます。
 
「しわ寄せ防止総合対策」の4つの柱
 1.関係法令等の周知広報
 ・都道府県労働局・労働基準監督署が、あらゆる機会を通じて、労働時間等設定改善法に加え、下請中小企業振興法に基づく「振興基準」等についてもリーフレット等を活用して周知
 ・「しわ寄せ防止キャンペーン月間」の設定による経営トップセミナーの開催等の集中的な取組
 ・地域の労使の代表が参加した協議会等における課題の共有と地域での取組の推進
 2.労働局・労基署等の窓口等における「しわ寄せ」情報の提供
 ・下請等中小事業者から、大企業・親事業者の働き方改革に伴う「しわ寄せ」に関する相談が寄せられた場合には、相談情報を地方経産局に情報提供
 3.労働局・労基署による「しわ寄せ」防止に向けた要請等・通報
 ・労働局から管内の大企業・親事業者に対し、「しわ寄せ」防止に向けた要請等を実施
 ・下請事業者に対する監督指導において、労働基準関係法令違反が認められ、背景に親事業者による下請法等違反行為の存在が疑われる場合には、公取委・中企庁に 通報
 4.公取委・中企庁による指導及び不当な行為事例の周知・広報
 ・下請法等違反の疑いのある「しわ寄せ」事案の情報に接した場合には、公取委・中企庁が厳正に対応
 ・実際に行った指導事例や不当な行為の事例(べからず集)の周知・広報の徹底
資料
 
□(別添1)しわ寄せ防止総合対策の概要(PDF形式:1,210KB)PDF
□(別添2)しわ寄せ防止総合対策(令和元年6月26日策定)(PDF形式:121KB)PDF
 

                           別添2
 
大企業・親事業者の働き方改革に伴う下請等中小事業者への
「しわ寄せ」防止のための総合対策
                   令和元年6月26日
                   厚生労働省
                   中小企業庁
                   公正取引委員会
1 目的
 働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成30年法律第71号。以下「働き方改革関連法」という。)による改正後の労働基準法(昭和22年法律第49号)に規定する罰則付きの時間外労働の上限規制や年5日の年次有給休暇の確実な取得を始めとする改正事項が順次施行される中、大企業・親事業者(以下「大企業等」という。)による長時間労働の削減等の取組が、下請等中小事業者に対する適正なコスト負担を伴わない短納期発注、急な仕様変更、人員派遣の要請及び附帯作業の要請などの「しわ寄せ」を生じさせることにより、下請等中小事業者の働き方改革の妨げとならないことが重要である。
 このため、働き方改革関連法による改正後の労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(平成4年法律第90号。以下「労働時間等設定改善法」という。)第2条第4項において、事業主に対し、他の事業主との取引を行う場合において、著しく短い期限の設定及び発注の内容の頻繁な変更を行わないこと等、取引上必要な配慮をするように努めなければならないこととされたほか、働き方改革関連法による改正後の労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和41年法律第132号。以下「労働施策総合推進法」という。)第10条に基づく「労働施策基本方針」(平成30年12月28日閣議決定)において、このような「事業者の取引上必要な配慮が商慣行に浸透するよう、関係省庁が連携して必要な取組を推進する」こととされている。
 こうした厚生労働省の取組を踏まえ、中小企業庁では、下請中小企業振興法(昭和45年法律第145号)に基づく「振興基準」について、平成30年12月、親事業者に対して、?自らの取引に起因して、下請事業者が労働基準関連法令に違反することのないよう配慮すること、?やむを得ず、短納期又は追加の発注、急な仕様変更などを行う場合には下請事業者が支払うこととなる残業代等の増大コストを負担すること等を新たに盛り込む改正を行うなど、大企業等の働き方改革に伴う下請等中小事業者への「しわ寄せ」防止に向けて、各種施策を講じているところである。
 本総合対策は、働き方改革と取引適正化を車の両輪として捉え、「就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境」と「公正な取引環境」の実現が、大企業等と下請等中小事業者の双方において「成長と分配の好循環」を実現する上での共通の課題の一つであるとの認識に立ち、厚生労働省・中小企業庁・公正取引委員会が緊密な連携を図りつつ講じる所要の措置を取りまとめたものであり、これらの着実な実施によって大企業等の働き方改革に伴う下請等中小事業者への「しわ寄せ」を防止することを目的とするものである。
 
2 事業者が遵守すべき関係法令等の周知徹底
 ⑴あらゆる機会を通じた周知
 都道府県労働局(以下「労働局」という。)は、労働施策総合推進法第10条の3に基づく協議会等(地方版政労使会議を含む。)において、業所管省庁や労使団体等の関係者との間で、大企業等の働き方改革に伴う「しわ寄せ」に関する課題の共有を図り、地域における取組を推進する。
 また、労働局、労働基準監督署(以下「労基署」という。)及び働き方改革推進支援センターは、窓口、集団指導及び監督指導等のあらゆる機会を通じて、労働時間等設定改善法に加え、下請事業者が払うべき努力の方向性や親事業者が行うべき協力の在り方を示した「振興基準」等についてもリーフレット等を活用した周知を図り、事業者が遵守すべき関係法令等の内容について、事業者に広く周知を図る。
 さらに、労基署が行う働き方改革関連法に関する説明会において、地方経済産業局(以下「経産局」という。)の職員から働き方改革に伴う「しわ寄せ」防止に向けた周知啓発を行い、必要に応じ、説明会の会場で「しわ寄せ」に関する相談に応じるなど、労働局と経産局による連携した取組を実施する。
 ⑵「しわ寄せ」防止キャンペーン月間の設定等
 新たに11月を「「しわ寄せ」防止キャンペーン月間」と位置づけ、厚生労働省が実施する「過重労働解消キャンペーン」及び公正取引委員会・中小企業庁が実施する「下請取引適正化推進月間」の各種取組と連携を図りながら、経営トップセミナーの開催など、大企業等の働き方改革に伴う「しわ寄せ」の防止に向けた集中的・効果的な取組を実施する。
 ⑶公正取引委員会・中小企業庁による不当な行為の事例集等を用いた啓発
 公正取引委員会・中小企業庁は、下請代金支払遅延等防止法(昭和31年法律第120号。以下「下請法」という。)違反の疑いのある「しわ寄せ」事案など指導等を行った事案及び不当な行為の事例集(いわゆる「べからず集」)等を用いて、大企業等を対象とした各種説明会等の機会を活用し、分かりやすい啓発を積極的に行う。
 また、厚生労働省も、上記⑴の周知においてこの事例集等を活用する。
 
3 大企業等の働き方改革に伴う「しわ寄せ」に関する情報の提供
 ⑴「しわ寄せ」相談情報の提供
 労働局及び労基署等の窓口において、下請等中小事業者から、大企業等の働き方改革に伴う「しわ寄せ」に関する相談が寄せられた場合や、下請等中小事業者に対する監督指導時等において、大企業等の働き方改革に伴う「しわ寄せ」に関する情報を把握した場合(下記⑵の通報制度の対象となる場合を除く。)には、上記2⑴の周知を図るとともに、相談情報を経産局に情報提供する。
 ⑵通報制度の的確な運用
 労働基準関係法令違反の背景に、極端な短納期発注等に起因する下請法等違反が疑われる事案について、厚生労働省から公正取引委員会・中小企業庁に通報する制度の運用を厳格に行う。
 
4 大企業等の働き方改革に伴う「しわ寄せ」防止に向けた重点的な要請等及び厳正な対応
 ⑴労働時間等設定改善法に基づく重点的な要請等
 労働局は、管内の大企業等を個別に訪ね、労働時間等設定改善法第2条第4項の取引上必要な配慮をするよう努めなければならないとする規定に関する要請等を重点的に実施する。
 ⑵下請法等違反の疑いのある「しわ寄せ」事案に対する厳正な対応
 公正取引委員会・中小企業庁は、下請法等の違反の疑いのある「しわ寄せ」事案の情報に接した場合には、当該事案に対して厳正に対応する。
 
5 業所管省庁に対する働きかけ
 厚生労働省・中小企業庁は、大企業等の働き方改革に伴う「しわ寄せ」防止に向けて、業所管省庁から所管業界団体への指導、周知啓発等の積極的な関与について働きかけを行う。特に、次の取組については、確実に実施されるよう働きかけを行う。
 ?平成31年2月から3月にかけて厚生労働省から文書要請を行った業界団体へのフォローアップ調査を通じて得られた「しわ寄せ」の声やその防止、改善につながったとの声について、さらに追加ヒアリング等を行い、「しわ寄せ」の防止・改善事例を取りまとめ、業界団体への周知徹底を図る。
 ?全国的・地域単位の主要な会合等において、業所管省庁の幹部等から大企業等の経営トップに対し、自社の働き方改革により下請等中小事業者に「しわ寄せ」が生じないよう直接要請等を行う。
 ?「しわ寄せ」事案に対し、「振興基準」等を活用した行政指導を活性化させる。
 

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