「財政検証」でわかった 30〜40代の30年後の年金受給金額 (9/10)

「財政検証」でわかった 30〜40代の30年後の年金受給金額
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/261559
日刊ゲンダイ 公開日:2019/09/10 06:00 更新日:2019/09/10 06:00

公的年金の将来の給付水準などを示す「財政検証」が公表された。検証はおおむね5年に1度実施されるが、前回の2014年検証に比べ、やはりというか、残念というか、もらえる額はより一層厳しくなった。一体どれくらい減るのか?

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 前回2014年は6月に検証結果が公表された。今回も厚労省は同じ時期の公表を予定していたようだが、「夫婦で老後2000万円が不足」の金融庁報告のゴタゴタがあり、さらには参院選も重なって、姑息な政府の思惑でこの時期にまでずれ込んでいる。年金が将来どれくらいもらえるかは、現役世代にとっての人生設計や家族の消費金額に直結する最重要問題。それだけに今回の財政検証に対する国民の注目はより一層高いものとなってしかるべきだが、テレビや新聞など主要メディアに目をやると、どれもこれも韓国の話題ばかり。見事に政府の術中にハマっている。
そこで改めて今回の財政検証の中身をおさらいしてみよう。大きなところでは3つのポイントがある。

●標準的なケースでは約30年後の給付水準は今よりは2割近く目減りする
●繰り下げ受給年齢を75歳まで拡大(実質的な70歳支給開始の動き)
●学生など月5・8万円以上の賃金の人の年金加入も検討する

 アルバイト学生からも掛け金を徴収するとはいよいよ年金も断末魔だが、受給額はどれくらい減ってしまうのか。

 かなり楽観的と思われる標準的なケースでも2割減だ。今回の財政検証では、物価や賃金上昇率、運用利回り、将来の出生率や平均寿命などを材料に「?〜?」の6段階で受給水準を推定している。

では、具体的に年代別の年金額はどうなっていくのか?

 ケース?の場合(別表)、1975年生まれの40代が65歳になった時に夫婦2人でもらえる年金は19・9万円。1987年生まれの30代は同18・8万円となる。

 その後、国民年金の積立金が枯渇。現在の20代の年金額は所得代替率で36%となり、現在の水準(22・0万円)で計算すると、36%は夫婦で12万8500円。消費税も上がるのに、どうやって生活していくのか。
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「今の30代より若い人は年金だけでは暮らせません。若い頃は高齢者のために働き、高齢になったら自分のために働く。本気で声を上げるべきですが、今のところこの世代は静か過ぎます。政治家にも若い人の意見は届きにくいのでしょうが、3年前には『保育園落ちた』のSNS発信から待機児童問題がクローズアップされた例もありました」(前出の島澤氏)

 少なくとも韓国の悪口に留飲を下げている場合ではないようだ。ちなみに単なる偶然だとは思うが、2年前の衆院選の20代の投票率は33%、30代が44%、40代は53%、50代が63%。将来もらえる年金の所得代替率に極めて近くなっている。

 冗談もほどほどにとしか言えないような超楽観的な試算「ケース?」では、2046年度のモデル夫婦世帯の年金額が26・3万円(現在は22・0万円)。現役男子の手取り収入から見た割合である所得代替率は51・9%で、かろうじて50%を死守している。もちろん、バブル時代並みの好景気が前提だから、この試算を作った官僚たちも苦笑いしているだろう。

現実の日本を直視すれば、最も低い「ケース?」の他はあり得ない。中部圏社会経済研究所の島澤諭研究部長がこう言う。

「ケース?は、物価上昇率0・5%、実質賃金上昇0・4%などが前提になりますが、日本の現状はこれさえクリアできていません。そのため、最悪とされるケース?でさえ、過大評価の可能性があると考えます。そのケース?では2052年に国民年金の積立金(約9・2兆円=時価)がなくなり、完全賦課方式に移行。そのため1987年生まれの現在32歳の若者の年金額は、所得代替率で36%ほどにまで落ち込んでしまいます」

 専門家が指摘するように、物価は2015年から3年で1・3%しか上がっておらず、実質賃金も政府主導の賃上げが行われた2014年以降も16年と18年の2度しかプラスになっていない。

 

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