日弁連が人権問題として、労働に関する決議を採択。

http://mainichi.jp/life/job/news/20081013ddm013100038000c.html
 ◆日弁連が人権問題として、労働に関する決議を採択。
 ◇貧困拡大の歯止めに 政党への呼びかけや相談体制強化
 日本弁護士連合会(宮崎誠会長)が今月3日、富山市で開催した第51回人権擁護大会で、貧困と労働問題に関する決議を採択した。労働を人権問題として決議したのは初めて。非正規労働の若年者を中心に年収200万円以下の労働者が1000万人を超えるなどワーキングプア(働く貧困層)が社会問題となる中、日弁連が決議した背景と今後の動きに注目が集まる。

 ●原則正規雇用など要求

 人権擁護大会は、日弁連最大のイベントで、1年間の人権擁護活動をまとめ、今後の問題を探る大会だ。
 決議は満場一致で可決。(1)雇用の原則は正規雇用とし、登録派遣禁止などを図る労働者派遣法の抜本改正(2)すべての労働契約で労働条件
を均等待遇とする立法(3)最低賃金の大幅引き上げ(4)偽装請負、不払い残業など違法行為の根絶−−などを求めた。その上で「貧困の拡大に
歯止めをかけ、すべての人が人間らしく働き生活する権利を享受できるよう全力を尽くす」とした。
 今年労働が取り上げられたのは、06年に「貧困の連鎖を断ち切り、すべての人の尊厳に値する生存を実現する」とした決議を採択したのがきっ
かけ。今回の決議を準備した事務局の棗(なつめ)一郎弁護士は「労働と貧困は密接に関連している。貧困に連なる労働の現状は放置しておける状
態ではない」と説明する。

 ●決議実行へ取り組み

 今回の決議は、今後どのように生かされるのか。棗弁護士は「多角的に調査し、論議して決まった決議なので、言っておしまいではない。今後、
日弁連として決議を実行するために取り組みを始める」と語る。日弁連の主催で、年内に労働者派遣法の抜本改正を求める院内集会で各政党に呼び
かけを行う。また、労働現場での違法行為や脱法行為の根絶に、弁護士による労働相談体制の強化、労働と貧困をテーマとする常設委員会を設置し
て決議に沿った活動の展開を考えていく予定だ。棗弁護士は「決議は弁護士が認識を共有したことであり、意義は大きい。人間らしく生活する権利
の実現を目指して取り組みたい」と話している。

 ●相談1日1万件超

 決議に先立つ2日にはシンポジウムを開催し、貧困と労働を多様な視点で討論した。日弁連が全国一斉で実施した非正規労働、生活保護に関する
電話相談は、1日に約1万2000件が寄せられた。労働相談の紹介では「時給800円が7年かけて900円になったが、ある日会社から『もう
いらん』と言われた」(50代女性)、「派遣労働で3カ月分の賃金不払いにあい、別の派遣先で働いたが生活に困窮して借金をした。来月までの
生活費がない。自殺を考えていた」(30代男性)など低賃金と仕事の不安定さを訴えるものが多かった。
 生活保護関連では「派遣で働いたが仕事がなくなり、家賃が払えず立ち退き寸前だ」(40代男性)など働きながらも貧困に陥っていく様子や、
「60回面接に落ち、就職できなくても『65歳以下の生活保護申請はまず無理』と言われた」(60代男性)などと労働と貧困の連鎖が強調され
た。米国、韓国、欧州など海外の状況なども報告された。【東海林智】

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 ◇増え続ける貧困層
 労組などがワーキングプアの指標とする年収200万円以下の労働者は年々増え続け、06年に初めて1000万人を超えた。07年も速報値で
1032万人となっている。

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