外務省の警備業務にあたっていた男性警備員(当時58歳)が昨年3月、胸部大動脈瘤(りゅう)破裂で急死したことについて、遺族の代理人弁護士が2日、渋谷労働基準監督署から先月21日付で過重労働による労災認定を受けたと発表した。川人博弁護士は「官公庁の警備業務は一般競争入札による低価格化が進み、労働環境が著しく悪化している」と指摘。官公庁に申し入れをするなど、是正を求めていく考えを明らかにした。
弁護団や遺族によると、男性は08年6月に警備会社「ライジングサンセキュリティーサービス」(東京都)に入社し、外務省で立しょうや訪問者への対応業務に従事。午前7時ごろから午後8時ごろまで、休憩時間もほとんどなく働いた。11年3月4日、帰宅のため駅から自宅に向かう途中で胸の痛みを訴えて救急搬送され、翌5日に死亡した。
渋谷労基署は、男性が倒れる直前2カ月間の時間外労働時間の月平均が81時間40分に上ることから過労死と認定。記者会見した内縁の妻(57)は「あと2年で定年退職を迎えたら、旅行に行きたいと口にしていた。働きづめで、さぞかし無念だったと思う」と涙を拭った。同社は「担当者が不在でコメントできない」としている。【市川明代】