汚染水めぐる首相発言に福島から「あきれた」「違和感」

スポニチ 2013年9月8日

 「状況はコントロールされている」。安倍晋三首相は、国際オリンピック委員会(IOC)総会で、東京電力福島第1原発事故の汚染水漏れについて、こう明言した。しかし、福島の漁業関係者や識者らからは「あきれた」「違和感がある」と批判や疑問の声が相次いで上がった。

 「汚染水の影響は福島第1原発の港湾内0・3平方キロメートルの範囲内で完全にブロックされている」とも安倍首相は説明した。だが、政府は1日300トンの汚染水が海に染み出していると試算。地上タンクからの漏えいでは、排水溝を通じて外洋(港湾外)に流れ出た可能性が高いとみられる。

 福島第1原発で収束作業に当たる30代の男性作業員は「そんなことを言ってしまって大丈夫なのか」と指摘する。

 地上タンクの設置に携わる作業員仲間からは「簡単に解決しそうにない。深刻だよ」と聞かされる。汚染水問題以外にも、敷地内では突然放射線量が上がるなど、細かいトラブルも絶えない。「廃炉まで、これから何十年もかかる。発言には違和感がぬぐえない」と強調した。

 原発事故のため、福島県の漁業は全面的に中断している。9月に事故後初の試験操業を始める予定だったいわき地区の漁協も、実施の延期を決定。福島県いわき市の漁師、吉田久さん(62)は「国の対策が後手後手だったから汚染水漏れは悪化した。『国を挙げて対応するので安全だ』との主張には違和感がある」としながらも「東京開催は世界から(福島を)認めてもらえたようで、多少は救われた」とも話した。

 いわき市の別の漁師(64)は「汚染水の問題は、これから何十年もわれわれに付いて回るだろう。首相があのような発言をした以上、国が全面的に取り組んでくれるものと信じたい」と語った。

 京都大原子炉実験所の小出裕章助教(原子核工学)は「何を根拠にコントロールされていると言えるのかが分からない。あきれた。安易な発言をしても、約束を破ることになるだけだ」と厳しく批判する。

 政府は原発の周囲に凍土遮水壁を設置し来年度中の運用を目指すとしているが、小出助教は「設置までは汚染水が垂れ流しだし、設置しても、どれだけ漏えいを防げるか疑問だ」と切り捨てた。

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