生活保護の支給基準、地裁が言及 「状況、個別に考慮」

朝日新聞 2013年11月1日

写真・図版:判決後、支持者らに「勝訴」を伝える原告代理人=大阪市北区(省略)

就労することが可能との理由で生活保護の支給を認めなかったのは違法だとして、大阪府岸和田市の男性(40)が同市を相手取り、保護申請の却下処分の取り消しなどを求めた訴訟の判決が31日、大阪地裁であった。田中健治裁判長は「申請者の状況を個別に考慮すべきだ」とし、年齢や健康状態、学歴、生活困窮度合いなど行政側の判断の基準を示したうえで、処分を取り消した。原告側によると、生活保護をめぐって司法が支給の具体的な基準に言及したのは異例という。

 判決などによると、男性は2008年に夫婦で同市に転居。求職活動をしたが就職先が見つからず、同年6〜12月に計5回生活保護を申請したが却下された。

 田中裁判長はまず、行政が厚生労働省の局長通達に基づき稼働(働く)能力の有無によって支給の可否を判断している点に言及。「能力の有無だけではなく、その程度についても考慮する必要がある」と指摘した。また、「生活を維持するため働こうと努力していれば、一般的に見ればさらに努力する余地があったとしても、働く意思はあると認めるべきだ」との判断の枠組みを示した。

 そのうえで、男性の最終学歴が中学卒業で、特殊な技能や資格がない▽ハローワークなどで求職活動し、最低限必要な努力をしていた▽岸和田市周辺での有効求人倍率が0・5を下回っていた――と認定。男性には高度な稼働能力はなく、「働く意思はあったが働く場がなく、保護が必要だった」と結論づけた。

 男性は国家賠償法に基づき、市に100万円の賠償も請求。これについては「求職活動をしたかを判断する際、漫然と調査をした」として、本来なら受給できるはずだった生活保護費と慰謝料計68万円の支払いを命じた。

 岸和田市は「判決内容を精査し、関係機関とも協議した上で対応を検討する」とのコメントを出した。(太田航)

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