労働時間:「規制対象外」が焦点に 見直し議論が本格化

毎日新聞 2014年04月03日

 厚生労働相の諮問機関、労働政策審議会の分科会は3日、労働時間の規制を見直す議論を始めた。最大の焦点は、一部の労働者について労働時間規制の対象外とする「適用除外」の導入を認めるかどうかだ。適用除外は政府の規制改革会議や経済界が強く求めている。しかし、安倍晋三首相は第1次政権時の2007年、同様の規制緩和を「残業代ゼロ法案」と批判され、断念している。議論の行方は見通せない。

 労働基準法は法定労働時間を「週40時間、1日8時間」と定め、残業が月60時間を超えれば企業は50%以上の割増賃金を払う必要がある(中小企業は猶予中)。だが、規制改革会議や産業競争力会議は昨年末、「時間で測れない創造的な働き方」などを掲げ、労働時間の上限規制の強化や休日・休暇を強制的に取らせる仕組みづくりとともに、一部労働者の労働時間の長さと賃金の関係を切り離す適用除外の三つを提案した。

 労働側はあくまで適用除外が提案の主眼とみている。3日の審議会で連合の新谷信幸委員は「適用除外が主で、あとの二つが従属するやり方は反対だ」と批判した。経団連の鈴木重也委員は「職種などで実態や背景は違う。判断を個別の労使に委ねることなどが肝だ」と応戦した。

 ただ、産業競争力会議などと経団連のスタンスは微妙に異なる。第1次安倍政権では、残業時間を賃金に反映させない「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入を目指したものの、「過労死が急増する」との批判が噴き出し、頓挫した。それを踏まえ、同会議などは慎重に進めようとしているようだ。厚労省幹部によると、経団連は「総合職の課長一歩手前の社員」を対象にしようとしているのに対し、産業競争力会議は「経営陣に近い管理職」を想定しているという。

 今年秋に結論をまとめたい行司役の厚労省は、一定時間残業したとみなし、それに見合った固定給を払う「裁量労働制」の対象職種を増やすことを検討している。それでも労使の対立が深まるなか、落としどころは見つかっていない。【佐藤丈一、中島和哉】

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