朝日デジタル 2015年1月5日
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連合の新年交歓会に出席した塩崎恭久厚生労働相(左から2番目)、経団連の榊原定征会長(中央)ら=東京都荒川区、稲田清英撮影(省略)
労働組合の中央組織・連合が5日、東京都内で開いた新年交歓会に、日本銀行の黒田東彦(はるひこ)総裁が顔を見せた。金融政策を取り仕切る日銀総裁が、労組の会合に出席するのは極めて異例だ。本格化する春闘を控え、安倍政権が掲げる「経済の好循環」の実現に向け、賃上げムードを盛り上げるねらいとみられる。
経団連の榊原定征会長も出席した。連合は毎年、日銀総裁や経団連会長に新年交歓会への招待状を出していたが、実際に出席するのは1989年の連合発足以来初めて。
会場に姿を見せた黒田総裁は、連合の古賀伸明会長の出迎えを受けた際に握手を交わしたものの、来賓としてのあいさつはせず、乾杯後に会場を後にした。
総裁が出席した理由について、日銀は「コメントはない」(広報)とするが、黒田総裁は昨年12月の講演で「高い収益をあげる企業が積極的に収益を使うことが求められる」と述べており、景気の好循環や、物価が下がるデフレからの脱却には、業績好調な企業が設備投資や賃上げに取り組むことが重要との立場だ。
日銀は物価を前年比で2%上昇させる「物価目標」を達成するため、市場に大量のお金を流す「金融緩和」を続けるが、足元では物価の上昇に賃上げが追いついていない。物価の上昇分をのぞく実質賃金指数は17カ月連続でマイナスだ。
一方、経団連の榊原会長は5日の交歓会で「企業収益を賃金の引き上げにつなげていく」とあいさつ。近く公表する春闘指針で、賃金体系を底上げするベースアップ(ベア)を「選択肢の一つ」と位置づけ、会員企業に積極的な賃上げを呼びかける方針だ。ただ、連合が掲げる「2%以上」のベア要求には否定的だ。
今年は春闘が始まって60年を迎える節目の年。古賀会長は記者会見で「賃金が継続的かつ安定的に上がらないと、物価だけが上がって大変な社会になる」と述べ、経営側を牽制(けんせい)した。(稲田清英、佐藤秀男)