http://mainichi.jp/select/news/20150626k0000m040073000c.html
毎日新聞 2015年06月25日 21時06分
精神疾患による労災認定の内訳は男性347件、女性150件。うち99件は自殺(未遂含む)で、13年度より36人増えた。厚労省が過労死のリスクが高まると位置づける「過労死ライン」の残業時間「月80時間以上の残業」は13年度より57件多い201件。このうち、160時間以上の残業は13年度の31件の2倍を超える67件に上り、長時間労働による過労の実態が浮かび上がった。
要因別では「悲惨な体験」が72件で最多。次いで「パワハラや暴行」が69件だった。
一方、脳・心臓疾患の労災請求は763件(13年度比21件減)、認定は277人(同29件減)だった。職種別では自動車運転従事者が最多の85人で、管理職24人、営業職14人の順。
厚労省職業病認定対策室は「仕事上でストレスを感じている人が増加しているのが労災増加の一因になっている」と話している。
過労死等防止対策推進法制定に携わった関西大学名誉教授の森岡孝二さんは「長時間労働の影響が深刻化している。精神疾患で認定されたケースのうち160時間以上の残業が多く、信じがたい。労働時間の上限規制に取り組まなければ過労死防止は困難だ」と話している。【東海林智】
◇長時間労働削減への規制不可欠
精神疾患による労災の増加に歯止めをかけ、減少させるには長時間労働の削減に向けた規制が欠かせない。
厚生労働省所管の過労死等防止対策推進協議会は、過労死の危険性が指摘される週60時間以上働く人の割合は30代男性で17%に達し、全体で468万人の「過労死予備軍」がいる現状を指摘している。
こうした現状を受け、政府が過労死や過労自殺の防止策に乗り出しているのは確かだ。防止策を国の責任と位置づけて昨年11月に施行された過労死等防止対策推進法(過労死防止法)はその成果と言える。基本方針となる大綱の素案には、過労死ゼロを目指すために2020年までに週60時間以上働く人の割合を5%以下にするなど数値目標を入れた。
だが、政府は流れに逆行するようにも映る労働基準法改正案を今国会に提出した。改正案には1日8時間の時間規制の適用が除外され残業の概念がなくなる「ホワイトカラーエグゼンプション」(残業代ゼロ制度)や、「裁量労働制」の営業職への拡大が盛り込まれた。長時間労働削減に政府が真面目に取り組もうとしているのか、疑わざるを得ないのが現状だ。【東海林智】