デジタル人材争奪 相次ぐ高額報酬制 派遣SEと格差広がる(5/10)
東京新聞 2019年5月10日 朝刊
人工知能(AI)やモノとインターネットをつなぐ「IoT」など最先端IT技術に精通した人材を獲得するため、高額報酬を出せる新たな人事制度を導入する日本企業が相次いでいる。米大手IT企業への人材流出を防ぐ狙いも。ただ、IT業界では「IT作業員」と呼ばれ低額報酬の人も多く、花形分野の正社員との格差が広がっている。 (吉田通夫)
NTTデータは最先端のIT技術者を対象に昨年末、従来の社内規定によらない高額報酬を払える制度を導入した。「確定申告が必要になる程度」(広報担当者)といい、少なくとも年間二千万円を超えるとみられる。社員平均の二倍以上だ。東芝も四月、報酬上限を設けない「プロフェッショナル従業員制度」を導入。広報担当者は「社内外から人材獲得につなげる」という。
ITと縁が薄かった製造業も最先端技術の活用に命運をかけ、人材獲得に懸命。ネットにつながる「コネクテッドカー」開発を急ぐトヨタ自動車は二〇一七年に、IT業界が集まる南武線各駅に「シリコンバレーより、南武線エリアのエンジニアが欲しい」などと訴えるポスターを掲げ、話題になった。
一方、ホームページ作成など従来技術で対応できる仕事については、IT企業が受注した仕事を、外部から派遣されたシステムエンジニア(SE)がこなす例も多い。大企業に派遣されている神奈川県の男性(53)の給与は手取りで毎月二十数万円、年間三百数十万円。ハローワークの求人票の賞与欄には「三・五カ月分」と書いてあったが支払われず、「(賞与は)月給に上乗せしており、賞与として支払うなら月給が減る」といわれた。下請けが一次から中小の二次、三次に続く場合があり、多重下請け構造は建設業界同様。発注元の急な要求の変更に応じるため長時間労働も多い。