ILO総会連日議論紛糾 ハラスメントの定義、適用範囲など固まる (6/14)

ILO総会連日議論紛糾 ハラスメントの定義、適用範囲など固まる

連合ニュース  2019年06月14日
 
 ILO総会「仕事の世界における暴力とハラスメント」基準設定委員会は、6月11日火曜より、具体的な議論を開始しました。14日金曜までに政労使から327本の修正案が提出され、委員会は1本ずつその可否について議論を行っています。しかし、連日、議論は紛糾しており、22時を超えてのナイトセッションを行っても、予定は大幅に押している状況です。
 
 
 委員会は、まず条約の根幹に関わる条文と関連性の高い条文を合わせて議論を行いました。その結果、13日木曜までに第1条「ハラスメントの定義」、第2条「対象者の範囲」、第3条「仕事の世界の範囲」、第4条「被害者・加害者の範囲」、第8条「禁止規定」、第10条「使用者が講じる措置」の議論が終了しました。
 
 大きな変更点としては、第2条の「あらゆるセクターの労働者、国内法および慣行で定義された被雇用者、契約上の地位にかかわらず労働する者、実習生および修習生を含む訓練中の者、雇用が終了した労働者、ボランティア、求職者および就職志望者を含むその他の者」に、「雇用者の権限、義務または責任を行使する個人」が、使用者側の修正案をさらに調整した上で追記されました。
 
 また、第2条との重複が懸念されていた第4条については、ニュージーランドから「仕事の世界におけるハラスメントについて、誰が加害者か被害者かを言及する必要はない」として削除するよう提案があり、日本政府をはじめ、EU、中東湾岸諸国、カナダ、アメリカ、ロシアなどの政府、使用者が賛成を表明しました。
 コスタリカは、第4条が削除されると条約にどのような影響があるかILO事務局に質問し、ナミビアもアフリカグループを代表して第三者が明示されないことによる影響を尋ねました。
 ILO事務局の法律顧問は、「第4条が削除されても、権利・責任関係に影響はなく、第三者は条約案の対象から除外されない」と明言しました。
 
 第4条の対応を議論した労働側ミーティングにおいて、連合の井上総合局長は、この間ILO条約案の内容を踏まえて法律策定に尽力してきたことを述べた上で、「国内のハラスメント対策の対象者拡大には、被害者・加害者に第三者が含まれていること明文化する必要がある」と訴えました。
 しかし、労働者側の結論として、被害者・加害者に第三者を入れることを明文化するべきではあるが、議論を前に進めるため、第4条を削除することを受け入れることとしました。
 連合は、委員会終了後、日本政府と話し合いを行い、ILO事務局の法律顧問の発言も踏まえ、「第4条が削除されても、本条約案の対象には第三者も含まれている」との日本政府の認識を確認しました。
 
 今後は、原則に戻り、残りの条約、勧告について、前文から順番に議論を行う予定です。
 
以 上

この記事を書いた人