「無給医」全国で2191人 国が初めて認める (6/28)

「無給医」全国で2191人 国が初めて認める (6/28)

 
□NHK_「無給医」全国で2191人 国が初めて認める
NHK 2019年6月28日 11時19分
 
大学病院で診療をしながら、給与が支払われない「無給医」について、国は調査の結果、全国50の大学病院に2191人いたことを公表しました。国が無給医の存在を認めたのは今回が初めてです。
 
「無給医」は、大学病院などで診療をしながら研修中であることなどを理由に給与が支払われない若手の医師や歯科医師のことです。
 
文部科学省は、ことし1月から全国108か所の医学部や歯学部の付属病院で診療にあたっている3万人余りの医師の給与や雇用の状況について調査しました。
 
その結果、全国50の大学病院に2191人の無給医がいることが確認できたと28日公表しました。
 
大学病院ごとの無給医の数は、順天堂大学医学部付属順天堂医院で197人、北海道大学病院が146人、東京歯科大学水道橋病院が132人、岩手医科大学付属病院が123人、昭和大学歯科病院が119人、愛知学院大学歯学部付属病院が118人、杏林大学医学部付属病院が95人、東北大学病院と大阪歯科大学付属病院、そして山口大学医学部付属病院が94人などとなっています。
 
また、東京大学や慶應義塾大学など7つの大学病院は1304人の医師について、「調査中」と回答しました。
 
国が無給医の存在を認めたのは今回が初めてです。
このほか調査では、理由なく雇用契約が結ばれていなかった医師が1630人、同じく理由なく、労災保険に入っていなかった医師が1705人いたことが明らかになりました。
 
今回、無給医の存在を認めた50の大学病院は今後は給与を支払うよう改めるとしています。
 
また、国も今後、大学が取り組む改善策が適切に行われているか、確認するとしています。
無給医とは
医師を目指す学生は医学部で6年間学んだあと、国家試験を受けて医師免許を取得します。
 
「初期研修」と呼ばれる最初の2年間は月給30万円ほどが手当てされますが、そのあとも大学の医局に所属しながら「大学院生」や「医局員」などの立場で数年間にわたり、若手医師として診療などの経験を積むケースがほとんどです。
 
医局は教授を頂点とし、准教授、講師、助教と連なるピラミッドのような構造となっていて、最も下に位置する大学院生や医局員などは医師として診療にあたっていても無給だったり、わずかな給与だったりすることがあるということです。
 
しかし、医局に所属する若手医師は専門医や医学博士の資格などを取るためや関連病院に出向する際の人事権などを握られているため、現状の制度に対して医局の上司らに疑問や不満の声を上げづらく、問題が顕在化しなかったと見られます。
 
この無給医の問題が長年見過ごされてきたことで医師の過重労働につながったり診療の質にも影響したりしていると指摘する専門家もいます。
 
専門家「労基法上も違法の可能性」
医師の働き方に詳しい福島通子社会保険労務士は「医師は聖職と思われてきたが無給医も労働者であると考えるべきだ。患者を診療しながら賃金が支払われないということは労働基準法上も違法である可能性がある」と指摘しました。そのうえで「今回無給医の存在が明らかになったことを好機と捉え、行政が改善に向けて動くべきだ。今までのやり方を変え、これからの医療を背負う若い医師が将来に希望を持てる体制に整える必要がある」と話しています。
 
柴山文科相「大変遺憾 改めるのが当然」
柴山文部科学大臣は記者団に対し、「実際に給与が支給されていない医師たちの存在が発覚したことは大変遺憾で、支払っていないという現状は改めるのが当然だ。こうしたことが起きないように各大学に指導するとともに、これから解明していかなければいけないと回答した大学についても、対応していく」と述べました。
 
厚労省「医師の労務管理適正化を支援」
今回の調査結果について厚生労働省は「現在、医師の働き方改革を進めているところであり、大学病院を含む医療機関に対しては医師の労務管理を適正化できるよう支援を行っていきたい」とコメントしています。
 
□東京新聞 無給医、50病院に2100人 大半雇用契約なし 大学病院、研究名目で診療
東京新聞 2019年6月28日 夕刊
 
〔表〕
 
 文部科学省は二十八日、労働として診療を行っているのに給与が支払われない「無給医」が、五十の大学病院に計二千百九十一人いたと発表した。調査対象とした医師約三万二千人の7%に上るが、まだ各大学が精査中の医師が千三百四人いて、人数がさらに増える可能性がある。無給医の多くは雇用契約を結ばず、労災保険も未加入だった。各大学は文科省の指導に基づき、給与の支払いや雇用契約の締結を進める。
 
 大学病院には、大学院生らのほか、自己研さんや研究目的の医師が在籍し、その一環で診療に携わる場合には給与を支払わない慣習が広く存在する。今回の調査では、診療のローテーションに組み込まれていた場合などを実質的な労働だったとし、給与の支払いがない医師を無給医とした。判断は各大学が専門家らに相談して行った。
 
 調査は一〜五月、国公私立九十九大学の百八付属病院に在籍する医師と歯科医師を対象に実施。昨年九月に診療に従事した計三万一千八百一人(教員や初期研修医を除く)について、同月の給与の支給状況などをまとめた。
 
 無給医と確認された二千百九十一人のうち、合理的な理由なく給与を支払っていなかったのは五十病院のうち二十七病院の七百五十一人。契約上は週二日なのに実際は週四日診療しているような例も含まれ、最大二年間さかのぼって支払う。
 
 残る千四百四十人は五十病院のうち三十五病院に所属し、無給の合理的な理由はあるが、診療の頻度や内容を踏まえて今後は給与を支給する。これらとは別に、六十六病院の三千五百九十四人が、ほかの所属先から大学病院で働いた分も含めて給与を受け取っているなど、合理的な理由があり給与を支給しない現状を維持するとした。
 
 病院別では、無給医が最も多かったのは順天堂大順天堂医院の百九十七人(対象者の46%)で、北海道大病院百四十六人(同24%)、東京歯科大水道橋病院百三十二人(同62%)が続いた。昭和大歯科病院は百十九人、愛知学院大歯学部病院百十八人で、それぞれ対象者全員が無給医だった。
 
 無給医かどうか精査中の千三百四人の内訳は、日本大板橋病院三百二十一人、東大病院二百三十九人、日大歯科病院二百十一人、慶応大病院二百人など。全対象者のうち、合理的な理由なく雇用契約を結んでいなかった医師は千六百三十人、労災保険の対象外だったのは千七百五人だった。
 
 多くの無給医は深夜や休日に、別の医療機関でアルバイトなどをして生活費を得ており、過重労働による診療への悪影響などが懸念されている。
 
◆医療事故の責任あいまいに
<全国医師ユニオンの植山直人代表の話> 文部科学省の調査は大学病院に報告を求める形で実施され、病院によって調査手法や無給医かどうかの判断に違いがある。今回明らかになった結果は氷山の一角で、実際はもっと多いだろう。いくら研修や研究のために病院にいるといっても、免許を持つ医師が診療をし、病院が報酬を得ている以上は賃金が払われるのが当然だ。加えて、雇用契約がなければ、労働時間の管理もなされず、医療事故が起きた際に責任の所在があいまいになることで患者の不利益にもなりかねない。早急な改善が必要で、国もフォローアップしていくべきだ。
 
<無給医> 大学病院などで実質的に労働の実態があるのに、給料が支払われていないと判断された医師。病院の人件費が限られているため、便宜的に無給とされたり、一部しか支払われなかったりするケースがある。(1)大学院生らが教育や研修名目で働かされる(2)契約した以上に勤務に入れられる−など、形態はさまざま。病院で診察や病棟管理を担う一方、生活費を稼ぐために深夜や休日にアルバイトをして、過労死した医師もいる。
 
□日経_50大学病院で「無給医」2000人超 文科省調査 
2019/6/28 11:03
 
文部科学省は28日、全国の大学病院で働く医師・歯科医師のうち、2191人が給与を支払われない「無給医」であったとする調査結果を公表した。大学院生らが自己研さんや研究などの名目で診療していたが、実質的には労働行為に当たり、各病院は遡及して給与を支払うといった対応を決めた。無給医の多くは雇用契約を結ばず、労災保険に未加入だった。
 
〔グラフ〕
 
無給医を巡っては、過去に雇用契約を結ばないまま診療する大学院生の存在が問題化。文科省は2013年に大学院生の雇用率100%を確認したが、大学病院側が自己研さん名目の医師らを除外するなどしており、多数の無給医の存在が明らかになっていなかった。
 
柴山昌彦文科相は28日、無給医について「たいへん遺憾。改めるのが当然」としたうえで、18年秋の一部報道を受けて調査し判明した点については「(過去の)調査や回答は表層的だったかと考えている」と述べた。
 
今回の調査は1〜5月、全国の国公私立の99大学108付属病院を対象に実施。各病院に大学院生や研修医、非常勤助手など教員以外の医師・歯科医師について、18年9月時点の給与の支給状況と、弁護士や社会保険労務士ら専門家に相談して決めた今後の対応を報告させた。
 
調査によると、同月時点で対象者は3万1801人で、50病院の2191人(7%)が無給医で、このうち合理的な理由なく給与を払っていなかったのは751人(27病院)に上った。診療のローテーションに組み込まれていたり、契約日数を上回って診療していたりした。
 
文科省は「労働基準法違反の可能性が高い」と指摘。各病院は最大2年を遡って支払う。
 
残りの1440人(35病院)は大学病院側は「本人が無給を申し入れるなど合理的な理由がある」としたが、専門家の意見を踏まえ今後は支給する。
 
このほか3594人(66病院)は勤務先から研修で派遣されたり、労働に当たらない程度の自己研さんだったりするため、無給を続ける。
 
1304人(7病院)については無給だったものの状況が明確でないため精査中で、給与などの対応は未定という。
 
残りの2万4712人(104病院)は支払っていた。
 
無給医が多かったのは順天堂大順天堂医院(197人)、北海道大病院(146人)、東京歯科大水道橋病院(132人)など。
 
各病院は「病院長から全診療科長に労務管理について周知徹底する」といった改善策を文科省に申告。同省が取り組み状況を今後確認する。
 
 
□大学病院に「無給医」2千人=研修など名目に−文科省
時事通信 2019年06月28日11時07分
 
 患者の診療に当たっているのに給与の支払いを受けていない「無給医」が、50の大学病院に少なくとも約2000人いることが28日、文部科学省の調査で分かった。
 
 文科省は全国に計108ある国公私立の大学病院に対し、昨年9月時点での医師と歯科医師の雇用実態を調査するよう要請。回答を集計して発表した。
 調査によると、教員らを除く医師と歯科医師は3万1801人。合理的な理由がないのに給与の全額または一部を支払っていなかったと病院側が回答したのは、このうち27病院の751人(全体の2%)だった。「自己研さん」として診療に当たらせていたが実態は労働だったり、決められた勤務日数を超えて診療させていたりした。
 給与不支給に合理的な理由はあったが、今後は支給すると回答した病院が35あり、対象は1440人(同5%)。合わせて2191人が今後は給与の支給を受けることになった。
 
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□無給医、50大学病院に2000人超 調査対象の7% 雇用契約なく労災未加入も
会員限定有料記事 毎日新聞2019年6月28日 19時27分(最終更新 6月28日 19時27分)
 
 文部科学省は28日、労働として診療を行っているのに給与が支払われない「無給医」が、50の大学病院に計2191人いたと発表した。調査対象とした医師約3万2000人の7%に上るが、まだ各大学が精査中の医師が1304人いて、人数がさらに増える可能性がある。無給医の多くは雇用契約を結ばず、労災保険も未加入だった。各大学は文科省の指導に基づき、給与の支払いや雇用契約の締結を進める。
 
 大学病院には、大学院生らのほか、自己研さんや研究目的の医師が在籍し、その一環で診療に携わる場合には…
 

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