子連れ出勤や在宅勤務拡充 企業の子育て支援広がる

SankeiBiz  2016.3.26
http://www.sankeibiz.jp/econome/news/160326/ecb1603261708002-n1.htm

 子供を連れての出勤や在宅勤務を認めて、小さい子供がいても安心して働き続けられる環境を整備する企業の動きが広がっている。働く女性の増加や人手不足が背景。出産や育児のため退職した元社員を活用する例もある。安倍晋三政権が「女性活躍推進」を掲げる中、こうした事例は一段と増えそうだ。

 男女とも

 「ママー」。体験型ギフトの企画、販売を手掛ける「ソウ・エクスペリエンス」(東京)のオフィスで、パソコンに向かって働く30代女性が、駆け寄ってきた3歳の長男を優しく抱き上げた。

 同社は平成25年から、子連れで出勤し、世話をしながら仕事ができる制度を導入した。子供たちは仕事場にある約40平方メートルのカーペットを敷いたスペースで靴を脱ぎ、おもちゃで遊ぶ。横の作業台で荷造り作業を進める社員らと自然と会話が生まれる。子供がけがをしないよう机の角などに緩衝材を貼っている。

 女性は昨年10月に入社。社会との関わりを持ちたいと働くことを決意したが、保育園に空きがなく「子供を連れて出勤できることが条件だった」と話す。「息子が他の社員に遊んでもらい、社交的になった」と成長を喜ぶ。

 子供が泣きだして仕事が中断することもあるが、西村琢社長(34)は「職場の雰囲気が和んだり、子育ての状況を共有できて互いに働きやすい環境づくりにつながったりと、メリットの方が大きい」と話す。

 従業員36人のうち男女8人が子連れ出勤している。保育園の迎えが難しいときなどに一時的に制度を利用するケースもある。昨年6月から月1回実施している職場見学会には、他企業の人事担当者や個人ら約20人が参加しているという。

 ■効率的

 通勤時間を削減して仕事や子育てに活用してもらおうと、在宅勤務制度を導入する企業もある。

 住友林業は21年度から導入。社員約4500人のうち利用者は20人前後。ほとんどが未就学児を抱える女性で、介護などで利用している男性もいるという。

 労働時間の正確な把握が難しい「みなし労働」の職種が対象で、人事部と所属部から制度を利用する許可が出ている社員は、在宅勤務をする前に毎回、所属長の了解を得る。一日のうち数時間だけの利用もできる。

 顧客対応が中心で自分の都合だけで仕事を進めにくい住宅業界では、多様な働き方を導入しにくいとされる。これに対し人事部働きかた支援室の牛木尚子さん(51)は「細かな規定を設けず、社員の事情に合わせて融通が利くようにしているため、継続できている」と話す。牛木さんも子育てのため週1回在宅勤務している。「静かな空間で集中でき、効率よく働ける」と強調する。

 退職後も

 全国で結婚式場を運営するエスクリ(東京)は繁忙期に人手を確保できるよう、育児や出産で退職した元社員に登録してもらい、インターネット上で働き手を募集する仕組み「マリクリ」を27年3月に導入した。

 担当者は「結婚式の仕事に憧れて入社する人がほとんど。子育てのために退職しても再び仕事ができる仕組みが整ったことで、安心して専門技術の習得に励める」と説明する。

 現在は、同業他社の元社員も働き手として登録でき、他社も募集できるようサービスを拡大している。

 

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