選挙準備による長時間勤務で死亡事故 執行猶予付き有罪判決 神戸地裁 (7/2)

 選挙準備による長時間勤務で死亡事故 執行猶予付き有罪判決 神戸地裁 (7/2)

 
□「選挙準備による長時間勤務が事故の要因の一つ」神戸地裁判決
NHK Web News 2019年7月2日 16時33分
 
 おととしの衆議院選挙の投票日前日、兵庫県川西市の選挙管理委員会の職員が居眠り運転による交通事故で1人を死亡、4人にけがをさせた罪に問われた裁判で、神戸地方裁判所は職員に執行猶予のついた禁錮2年の判決を言い渡しました。判決で裁判官は「選挙の準備による過酷な長時間勤務が事故の要因の一つと想像でき被告のみが責任を負うのは酷だ」と指摘しました。
 
 衆議院選挙の投票日前日だったおととし10月21日、兵庫県川西市で市の公用車が車2台と衝突して66歳の女性が死亡、男女4人がけがをし、公用車を運転していた当時の市の選挙管理委員会の職員田中俊浩被告(53)は裁判で過失運転致死傷の罪に問われました。
 
 2日の判決で、神戸地方裁判所の安達拓裁判官は「長時間労働で疲れていたのに、休憩や睡眠をとらず居眠り運転で事故を起こした責任は重大だ」と述べました。
 
 一方で、「選挙の準備による過酷な長時間勤務が事故の要因の一つと容易に想像でき、被告のみが責任を負うのは酷だ」と指摘し禁錮2年、執行猶予3年の判決を言い渡しました。
 
 この事故では、上司にあたる選挙管理委員会の元事務局長も過労の状態で運転を命じたとして書類送検されましたが、不起訴になっています。
 
遺族「1か月200時間以上の残業はおかしい」
 この事故の遺族は「被告の長時間労働が事故の原因で過酷な業務をさせた川西市に責任がある」と考えています。
 
 警察の調べによりますと、被告が事故を起こすまでの残業時間は、1か月間に229時間といわゆる過労死ラインを大幅に上回っていたとみられています。
 
 こうしたことから事故で亡くなった女性の息子で40代の男性は、弁護側の証人として裁判に加わり「事故の原因は過重労働をさせた市役所にある」と述べて寛大な判決を求めました。
 
 男性は「被告が処罰されても選挙管理委員会の働き方を見直さないとまた同じような事故が繰り返されてしまう。過労によって起きた事故だという事実から目を背けないでほしい」と話していました。
 
 判決後の取材に対し、この男性は「判決は長時間労働をさせて過労の状態にした川西市の責任について触れず、納得のいく内容ではなかった。1か月に200時間以上の残業をさせるような勤務はおかしい。もうすぐ参議院選挙があるが、同じような事故を繰り返さないためにも、全国の選挙管理委員会に働き方を見直してもらいたい」と話しました。
 被告の代理人の岩田和久弁護士は判決後の取材に対し「被告は『判決を重く受け止め、遺族に改めて謝罪したい』と話していた。今回の事件を、長時間労働になりやすい公務員の働き方を見直すきっかけにしてほしい」と話しました。
 判決を受けて、兵庫県川西市選挙管理委員会の宮路尊士委員長は、「亡くなられた方に改めて哀悼の意を表するとともに、重傷を負われた同乗者の方やご家族をはじめとする関係者に改めてお見舞い申し上げます。二度とこのような事故が起きないよう、職員一丸となって再発防止に取り組んでいきます」というコメントを出しました。
 
□過労の居眠り認定 衆院選準備で死亡事故 川西市職員有罪 神戸地裁 
毎日新聞2019年7月2日 12時04分(最終更新 7月2日 12時04分)
 
〔写真〕神戸地裁=三村政司撮影
 
 2017年の衆院選投開票前日に公用車で死亡事故を起こしたとして、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪に問われた兵庫県川西市職員、田中俊浩被告(53)に対し、神戸地裁は2日、禁錮2年、執行猶予3年(求刑・禁錮2年6月)の判決を言い渡した。安達拓裁判官は過労による居眠り運転だと認定した上で「小選挙区の区割り変更で業務が増え、連日の長時間勤務が居眠り運転の一因となったと想像できる。責任を被告にのみ負わせるのは酷だ」と述べた。
 
 検察側は、田中被告は事故直前の1カ月間は休みがなく、残業時間が200時間を超えていたと指摘。弁護側は寛大な判決を求めていた。
 
 この事故で、元上司の50代男性が道交法違反(過労運転下命)容疑で書類送検されたが、不起訴となった。【黒詰拓也、望月靖祥】
 
□残業229時間で居眠り運転 5人死傷事故に猶予判決
朝日新聞デジタル 後藤遼太 2019年7月2日14時22分
 
写真・図版 神戸地裁=神戸市中央区
 
 2017年の衆院選前日に過労状態で公用車を運転し、死傷事故を起こしたとして自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死傷)の罪に問われた兵庫県川西市職員の男性被告(53)に対し、神戸地裁は2日、禁錮2年執行猶予3年(求刑禁錮2年6カ月)の判決を言い渡した。安達拓裁判官は「結果は重大だが(被告が働いていた)選挙管理委員会の過酷な勤務が要因の一つと想像できる」と述べた。
 
 判決によると、市選管事務局主幹だった男性は17年10月21日、公用車で川西市内の期日前投票所へ行く途中、過労から居眠り運転をして対向車線へはみ出し、軽乗用車と衝突。軽乗用車を運転していた女性(当時66)を死亡させ、他の車も巻き込んで4人にけがを負わせた。男性の残業時間は事故前1カ月で229時間に上っていた。
 
 判決は「休憩して眠気をさます…
 
【関連情報】
衆院選で過労?川西市職員の死傷事故で捜索 2017/10/29
 

この記事を書いた人