ウーバーを脅かすカリフォルニアの画期的新法
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2019/9/12(木) 12:00配信 JBpress
ウーバーを脅かすカリフォルニアの画期的新法
ダラ・コスロシャヒ最高経営責任者(CEO)2018年9月イベントにて(写真:Shutterstock/アフロ)
米カリフォルニア州の議会で9月10日、画期的な法案が可決したと米ニューヨーク・タイムズが報じている。
■ 「請負」から「従業員」、フランチャイズオーナーも
米ウーバーテクノロジーズなどの配車サービス、いわゆるギグエコノミー(Gig Economy)で働くドライバーなどの人たちをこれまでの「請負業者」ではなく「従業員」として扱うよう義務付けるものだ。
請負業者と従業員の定義をどこよりも明確なものにするようだ。例えば、企業が仕事の実績を管理・統制したり、仕事の内容が企業の通常業務の範疇に入ったりする場合は「従業員」になるという。
今後は、配車サービスのほか、ウーバーイーツなどのレストラン料理の配達、ビル管理・清掃、ネイルサロン、建設作業などの仕事に関わる人、そしてフランチャイズ店のオーナーでさえも従業員に分類される可能性があると同紙は伝えている。
■ 福利厚生や最低賃金のないギグ・ワーカー
ギグエコノミーの企業で働く人たちは、社員にはある福利厚生や最低賃金制度などがない。有給休暇もなく、社会保障や医療保険の会社負担もない。
カリフォルニア州のマリア・エレナ・デュラーゾ上院議員は、次のように述べている。
「ギグエコノミー企業は自らを未来を作る革新的企業と呼ぶが、それは彼らが被雇用者の社会保障費を支払わないという未来だ。不当な低賃金には革新的なものは何もない」
■ 「働き方の自由」と「報酬・福利厚生」の両立
一方で、ウーバーなどは、請負制によって柔軟な働き方が可能になると主張している。
同業の米リフトは「報酬や福利厚生も重要、自由な働き方も重要で、大多数のドライバーは、これらが両立する思慮深い解決策を望んでいた。しかし議員らは、こうしたドライバーの意見を支持する機会を逃した」と反論した。
ウーバーとリフトはかねてからドライバーらを従業員として扱えば、事業が成り立たなくなるとも述べていたという。
■ 企業のコストは2〜3割上昇
ニューヨーク・タイムズは、この法律が施行されれば、カリフォルニア州だけで100万人以上の請負業者が従業員になると伝えている。ウーバーとリフトには同州に数十万人のドライバーがおり、彼らの雇用形態も変わることになる。ギグエコノミー企業のコストは今後20〜30%上昇するとみる業界関係者もいるという。
また、このカリフォルニア州の動きが他の州にも波及する可能性がある。ニューヨーク州では労働者の団体が同様の法律の制定を求めて運動している。ワシントン州とオレゴン州では法案が不成立となったが、カリフォルニアの事例を受けて新たな動きが起きる可能性もあるという。
■ ウーバーは経営体制刷新、リストラでコスト削減
こうした中、ウーバーは役職を廃止したり、部門を統廃合したり、人員を削減したりして経営体制の刷新を図っている最中だ。今年(2019年)6月には、COO(最高執行責任者)職を廃止したほか、「マーケティング」や「広報」「ポリシー(政策担当)」部門を統合した。これに伴い最高マーケティング責任者(CMO)が辞任した。
7月にはマーケティング部門で約400人を削減した。米ウォール・ストリート・ジャーナルなどは9月10日、ウーバーが435人の技術職員をレイオフしたと報じた。
ダラ・コスロシャヒ最高経営責任者(CEO)は社内文書で「ある時点になると、組織が大きければ、よい結果を出せるとは言えなくなる。むしろ意思決定が遅くなったり、指揮系統が曖昧になったりする」と述べたという。
小久保 重信