新人看護師の自殺 国は労災“認め“終結も…その後病院側「認められない」 遺族 新たな裁判へ (9/22)

新人看護師の自殺 国は労災“認め“終結も…その後病院側「認められない」 遺族 新たな裁判へ 札幌市【スマホニュースUHB】
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190922-00010000-hokkaibunv-hok&p=2
9/22(日) 8:04配信 北海道ニュースUHB

愛娘の自殺…一度は終わった裁判が

UHB 北海道文化放送
7年前、札幌の病院に勤めていた当時23歳の新人女性看護師が、長時間労働などによりうつ病を発症し自殺しました。労働基準監督署は2018年、女性の死は労災だったことを認めましたが、病院側はこの事実を全面否定しました。娘のために戦うことを決めた遺族の思いに迫ります。

 2019年9月17日、娘が勤務していた病院側に安全配慮義務違反があったとして約9400万円の損害賠償を求め民事訴訟に臨んだのは、札幌の新人看護師、杉本綾さん(当時23)の母親(56)です。

 札幌市豊平区のKKR札幌医療センターの病棟に勤務していた綾さんは2012年、長時間労働などによりうつ病を発症し、その年の12月に自宅で自殺しました。23歳でした。

 綾さんの母親:「睡眠時間は2,3時間になっていたので、毎日、私も働いているかのように、気持ちが安らがなかった」

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病院側を相手にした裁判の初弁論に向かう綾さんの母親たち(2019年9月17日、札幌地裁前)

SNSで悲痛な“訴え“
母親は、労災認定を求め国を提訴。その根拠は、娘が仕事を始めてからすぐに直面した長時間労働の実態でした。

 5月の時間外は約91時間。その後も長時間労働が続き、6月に約85時間、7月は約73時間、8月は約85時間、9月は約70時間、10月は約69時間、そして11月は約65時間に及びました。

 綾さんの母親:「(夜中の)2時、3時に電気がついているな、うたた寝しているのかなとのぞくと勉強していて、こうしないとついていけないと、その言い方がすごく辛そうで…」

 仕事中に指摘された知識や技術を自宅に帰り補う日々。わずかな睡眠時間しかとれないなか、7月には医療ミスを起こしました。

 (2012年7月、綾さんのSNSより)「ここ最近絶不調です。本気でどうやったら病院に来なくていいか、存在消せるか、死ぬか?とか考えました」

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綾さんの時間外記録より

国は認めた“時間外“勤務
国は2018年10月、ミスの前後に100時間を超える時間外があったなどとして、労災を認める判断をしました。

 綾さんの母親(2018年10月):「(娘には)ひとつ無事終わったよ。力を貸してくれてありがとうと伝えた」

 しかし、これを病院に伝え謝罪を求めた母親に、思わぬ現実が待っていました。

国は労災認定 しかし病院側が“否定“
綾さんの母親:「(病院側の回答は)『その事実は認められない』それだけでした。正直、がくぜんとした感じです」

 病院の運営母体である国家公務員共済組合連合会は、一切の事実認定を否定。法廷で争う姿勢を示したのです。

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2012年7月、綾さんのSNSより。

 綾さんの母親:「(綾は)悲しんでいると思う。だから戦いたくなかった。(綾は)本当はあの病棟で頑張って認められて、一人前になって働いていたいはずだったし、『私のような思いをさせないために、(病院が)少しでもよくなってほしい』と、今でも思っているはず。私が、また何年も苦しい思いをして病院相手に戦うことを、絶対に望んでいないはずなので…」

 母親が、この裁判で求めていることは…。

 綾さんの母親:「すごい一生懸命頑張っていたので、“綾は頑張っていた“ということを一番言ってほしい。大勢の患者や職員のためにも、いい病院になってほしい」

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綾さんの母親は「(綾は)悲しんでいると思う。だから戦いたくなかった」。

「綾は悲しんでいると思う」
そして迎えた2019年9月17日、母親は裁判官に、自らの言葉で訴えました。

 (母親の意見陳述より):「私は、綾の幸せそうなウェディングドレス姿を見ることや、綾とそっくりな孫を抱くことを楽しみにしていました。そのような望みはこの先、決してかないません。どうか、今後の医療や働く人の、心や体を守ることにつながる判決をお願いいたします」

 これに対し国家公務員共済組合連合会は、「長時間労働を命じておらず、過重労働ではなかった」などと主張しました。

 綾さんの母親:「苦しい思いをして何年も戦ってきた労災が認められた。そのこと自体もすべて否定された。とても残念だった」

 愛娘の死から7年。健全な医療業界になってほしいと願う、母親の戦いが始まりました。

UHB 北海道文化放送
 

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