パワハラ防止策を企業に義務づけ 指針案まとまる 厚労省審議会
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NHK News 2019年11月20日 22時11分
パワハラを防止するための対策を企業に初めて義務づける法律が来年施行されるのを前に、厚生労働省の審議会は、パワハラにあたる事例を具体的に示した指針案をまとめました。
厚生労働省の審議会が20日にまとめた指針案によりますと、パワハラを優越的な関係を背景とした言動で、業務上必要かつ相当な範囲を超えて、労働者の就業環境が害されるものと定義しています。
そのうえで、パワハラに該当する事例を「身体的な攻撃」や「人間関係からの切り離し」など6つの類型に分けて具体的に示しています。
このうち「精神的な攻撃」では、人格を否定したり、ほかの労働者の前で大声で威圧的に叱責したりすることはパワハラに該当する一方、社会的ルールを欠いた言動があり、注意しても改善されない場合に強く注意をすることは、該当しないとしています。
具体例の記載をめぐっては、業務上の指導との線引きが難しいとして明らかに該当するケースのみにすべきだとする経済団体側の委員と、定義が狭いとむしろパワハラを助長しかねず、労働者の主観にも配慮すべきだとする労働組合側の委員とで意見が対立していました。
今回、まとまった指針案では、具体例について明らかに該当するケースにとどめた一方、事業主の責務として、労働者側の認識にも配慮するよう求める記載を加え、パワハラに該当するかどうか微妙な場合にも、広く対応するよう求めています。
パワハラを防止する対策は、大企業が来年6月から、中小企業が令和4年度から義務づけられることになっていて、厚生労働省は、指針案について国民から広く意見を募るパブリックコメントを行ったうえで、年内にも正式に策定することにしています。
指針案とパワハラの具体例は
今回まとまった指針案では、パワハラの具体例について明らかに該当するケースに限って、6つの類型に分けて示しています。
「身体的な攻撃」
例えば、けがをしかねない物を投げつけることはパワハラに該当しますが、誤ってぶつかることは該当しないとしています。
「精神的な攻撃」
人格を否定したり、ほかの労働者の前で大声で威圧的に叱責したりすることはパワハラに該当する一方、社会的ルールを欠いた言動があり、注意しても改善されない場合に強く注意をすることは該当しないとしています。
「人間関係からの切り離し」
自身の意に沿わない労働者を長期間にわたり別室に隔離したり、自宅研修させたりすることはパワハラに該当する一方、処分を受けた労働者を通常業務に復帰させる前に、個室で必要な研修を受けさせることは該当しないとしています。
「個の侵害」
職場以外でも継続的に監視することや性的指向・性自認や病歴などを、本人の同意を得ずに他の労働者に暴露することはパワハラに該当するとした一方、配慮する目的で家族の状況をヒアリングしたり、了解を得たうえで病歴などを人事労務の担当者に伝えたりするのは該当しないとしています。
そのうえで事業主の責務として、パワハラへの対応方針を明確にして周知・啓発することや、相談が寄せられた場合に適切に対応するための体制を整備することなどとしています。
また、相談窓口では、相談者の受け止めなどその認識にも配慮しながらパワハラに該当するか微妙な場合であっても広く対応することなどとしています。
このほかフリーランスや就職活動中の学生など、第三者へのパワハラや顧客からのパワハラに関する相談を受けた場合も適切な対応を求めています。
専門家「グレーゾーン明示は困難 限界認識し活用を」
パワハラの問題に詳しい成蹊大学の原昌登教授は、指針案について「パワハラがない社会を目指していくということで、大きな意義がある。一方で指針では、明らかにセーフなケースと明らかにアウトなケースは書けるが、グレーゾーンを示すのは難しいため、指針の限界ということも改めて認識したうえで、活用していくべきだと思う」と話しています。
そのうえで、原教授は「相手の人格を傷つけない、パワハラには当たらない注意や指導の在り方を企業が探求して、指針の下で、広く従業員と共有していくことが重要だ。今後、どの職場でも対策が行われ、パワハラ問題が少なくなっていく社会を目指し、次の世代に引き継ぐことが今の私たちの責務だと思う」と話しています。