ことしの出生数 初めて90万人下回る 少子化想定上回るペース (12/24)

ことしの出生数 初めて90万人下回る 少子化想定上回るペース
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191224/k10012226741000.html?utm_int=news_contents_news-main_002
NHK News 2019年12月24日 17時49分

ことし1年間に生まれた子どもの数を示す「出生数」は全国で86万人余りと、はじめて90万人を下回る見通しとなったことが、厚生労働省のまとめでわかりました。出生数が86万人まで減少するのは国の予測よりも2年早く、少子化が想定を上回るペースで進んでいる実態が明らかになりました。

厚生労働省は毎年1月から10月までの数値などをもとに、その年に生まれる子どもの数を示す「出生数」を推計しています。

それによりますと、ことしの出生数は86万4000人と、初めて90万人を下回り、明治32年に統計を取り始めて以降、最も少なくなる見通しです。

出生数が86万人まで減少するのは国立社会保障・人口問題研究所の予測よりも2年早く、少子化が想定を上回るペースで進んでいる実態が明らかになりました。

出生数は去年と比べると5万4000人減少する見通しで、平成以降では、平成元年に(1989年)6万7000人余り減った時に次いで2番目に大きな減少幅になると見られています。

一方、死亡した人の数は137万6000人と、去年より1万4000人増えて、戦後では最多となる見通しです。

出生数から死亡数を差し引いた人口の減少数=自然減は51万2000人と去年より6万8000人多くなり、初めて減少幅が50万人を超える見通しです。

出生数が死亡した人の数を下回るのは平成19年から13年連続となり、人口の減少が加速している実態も浮き彫りとなりました。

「令和婚」が出生数に影響か 厚労省
出生数が国の予測よりも早いペースで減少する見通しとなった理由について、厚生労働省は「若い女性の人口が減っていることなど、いくつかの要因が考えられるが、ことしは『令和』という新しい時代になってから結婚しようと、婚姻の機会を先延ばしにしていた人が多くいたことも、出生数の減少に影響を与えたのではないか」としています。
出生数 昭和22年に比べ3分の1以下に

出生数は戦後まもない昭和22年(1947年)には267万8792人に上っていました。

その後、減少したあと、昭和30年代から40年代にかけて、一度、増加に転じましたが、そこから再び減っていきました。

平成元年(1989年)には124万6802人となり、その後も減少傾向が続き、平成28年(2016年)には初めて100万人を下回りました。

ことし(2019年)は86万人余りと、昭和22年と比べると3分の1以下となる見通しです。

進む人口減少
少子化に伴って、人口減少も進んでいます。

平成17年(2005年)に初めて出生数が亡くなった人の数を下回り、自然減となりました。
ことしは自然減の数が51万2000人と、初めて50万人を超える見通しとなり、人口減少も加速している実態が浮き彫りとなっています。
出生数減少の要因は
なぜ出生数が減り続けるのか。そこにはいくつかの要因が指摘されています。1つは「未婚率」の上昇です。
50歳の時点で結婚を経験していない人の割合は、平成27年の時点で男性が23.37%で全体のおよそ4人に1人、女性は14.06%で、7人に1人と、男女とも、これまでで最も高くなっています。

また、結婚する年齢が高くなる「晩婚化」も要因の1つとされています。
平成30年の初めて結婚した人の平均年齢は男性が31.1歳、女性が29.4歳で、いずれももっとも高くなっています。

さらに収入が少なく生活が厳しいと感じる人が多くいることや、子どもを産む年齢が上がっていることなども少子化の要因になっているという指摘もあります。

平成27年に国の研究所が行った調査では希望する人数の子どもを持てていない夫婦に理由を聞いたところ、「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」と答えた人が最も多く56%、「高年齢で産むのはいやだから」と答えた人は40%にのぼっています。
専門家「今までと同じ発想では経済成長難しい時代に」
出生数の将来推計を行う国立社会保障・人口問題研究所の前所長で津田塾大学総合政策学部の森田朗教授は「ことしの時点で出生数が86万人まで減ったことには驚いた。未婚率の上昇や子どものいる家庭が減ったことなど、複数の要因が重なって少子化が加速している」と話しています。

森田教授は出生数の減少が医療や介護、それに年金といった社会保障制度に大きな影響を与えると考えています。

具体的には「少子化が進むと15歳から65歳程度と言われている生産年齢人口が減る。国の富を作り出して社会保障制度を支える世代が減り、高齢者の数が増えてくるので、社会保障を取り巻く環境は将来的にかなり厳しくなってくる」と指摘しています。

また経済に与える影響も大きいと指摘し、「少子化が進めば労働力も不足し、1人当たりの生産性を維持できても国内総生産が減少するおそれがある。今までと同じ発想では経済成長を遂げることが難しい時代になってくる」としています。

そのうえで、「ことし人口の自然減がはじめて50万人を超えたが、鳥取県の人口が55万人なので、1つの県とほぼ同じくらいの人口が毎年減っていくことになる。少子化対策に力を入れることはもちろん必要だが、これまで経験したことの無い少子化や人口減少が起きることを前提に、国の在り方を考えなければならない時期に来ている」と指摘しています。
 

この記事を書いた人