大学側の不当労働行為認定させた 東北大学職員組合 片山知史委員長に聞く
しんぶん赤旗 2019年12月31日【3面】
非常勤職員の雇い止めが進められている東北大学で東北大学職員組合は宮城県労働委員会に救済を申し立て、県労委は11月末、大学側の不当労働行為と認定しました。雇い止め撤回へたたかう同組合の片山知史(さとし)委員長(52)に聞きました。(高橋拓丸)
大量雇い止め撤回求めてたたかう
私たちはこれまで、大学側が大量雇い止めの理由としてきた財政上の証拠を提出するよう繰り返し求めてきましたが、大学側は一切応じませんでした。それが今回、(県労委が)「不誠実団交」として不当労働行為を認定し、団交で資料の提示や財務状況の説明など誠実な対応をするよう命じました。
転換確認せず
2013年に労働契約法が改正され、契約期間が5年を超える非正規労働者は無期契約に転換申し込みが可能となりました。
しかし大学当局は、実際に何人が無期転換を希望するのか確認すらせず、非正規労働者を雇い止めし、18年までに282人が雇い止めされました。
この方針転換で事前に退職した人を含めると、約470人に達すると推測されます。推測というのは、大学側がその数字さえ出してこないからです。
大学側は「不当労働行為」を認定した命令書の内容を不服として一切応じず、中央労働委員会に再審査の申し立てを行っています。
命令書は「誠実に交渉しなさい」と大学側に命じているだけで、「全員を無期転換しなさい」と言っているのではありません。大学側が「これが要求された資料です」と交渉に応じればいいのです。不服申し立てをするのは、誠実に交渉をしたくないとの意思表示にしかなりません。
非正規労働者の待遇を安定雇用にするための法律を逆手に、首にする妥当性を雇用側は証明することができないんです。だから“逃げ”に徹して、結果、不当労働行為になった。命令書の本質的な意味は、それをはっきりさせたことにあると思います。こういう認識が広がってくれれば、非正規労働者の安定雇用と労働者の尊厳を守る方向に社会が動くと私は期待しています。
大学側は業務の一環でやっています。私たちの組合は小さいし、ホームページから受け付けているカンパで賄っており、いつも赤字スレスレ。楽なたたかいではありません。
2月には本訴
労働契約法が改定されて5年で、労働者が首を切られる職場が大学に限らず増えています。弁護団のみなさんは、おかしいと声をあげ、労働者の雇用と尊厳を守るために頑張っています。それに全面的に賛同し、一緒にたたかいたいとの思いもあります。私は、組合員であり続ける限り、たたかい続けていきたいと決意しています。
来年2月6日には仙台地裁で労働争議の本訴があります。弁護団の熱い支援を得て、雇い止め方針を撤回させるために頑張ります。
【関連記事】
東北大の不当労働行為認定 宮城県労委、非正規雇用
https://this.kiji.is/569154190546175073?c=44341039600582657
共同通信社 2019/11/18 22:34
東北大学職員組合(労働組合)が有期契約の非正規職員を無期転換して継続雇用するよう大学側に求めた団体交渉を巡り、宮城県労働委員会は18日、東北大が「誠実に説明しているとは認められない」として不当労働行為を認定する命令を出した。
命令書は、大学側が希望者全員の無期転換に応じられないことを示す財務状況の資料を提出しなかったことを不当労働行為に当たると判断した。
東北大は「主張の一部が認められなかったことは残念。今後の対応を検討したい」とコメントした。
【東北大学職員組合声明】
http://www.tohokudai-kumiai.org/docs19/sm191118.pdf
声明 大学当局は、不当労働行為認定を真摯に受け止め、問題の早期全面解決を図るべきです。
2019年11月18日
東北大学職員組合
1 本日午前、宮城県労働委員会は、東北大学職員組合による不当労働行為の救済を求める申立(2018年2月20日)について、東北大学当局に対して、具体的な資料を示すなどして誠実に対応することを命じる命令を出した。
2 この労働委員会においては、改正労働契約法に基づく非常勤職員の無期転換を要求する団体交渉に対して、東北大学当局が誠実に対応しているかどうかが問われた。
3 争点は、団体交渉に関連し、大学当局が組合の要求した有期雇用職員を無期転換できない理由についての財務状況等の資料を提供しないこと、2018年3月末の雇い止めを前に要求した団体交渉開催に早急に応じなかったこと、組合が提出した質問要求項目に対し、回答が一部のみであったことが不当労働行為に該当するかであった
4 本日の命令は、この申立人東北大学職員組合の主張に真正面から応え不当労働行為の事実を認定したもので、われわれはその見識ある判断に深甚の敬意を表するものである。
5 本件は、2013年に改正労働契約法が施行され、毎年契約を更新する非正規職員の安定雇用のために通算契約期間が5年を超える場合無期契約への転換の申込みが可能となったことに端を発する。東北大学は2014年に就業規則を改定し、非正規職員の通算契約期間の上限を5年以内とし、2013年に遡って適用した。そのため2018年3月末に、約300名の大量雇い止めが生じた。この対応は、無期転換逃れであることに疑いなく、必要性合理性のない不利益変更であるが、東北大学はそれらを認めず、資料の提出を拒み団交を引き延ばすといった不誠実交渉をせざるを得なかったことが背景である。
6 改正労働契約法の趣旨に反し、多くの大学や企業において、更新の上限を5年以下とする就業規則が設けられ、無期転換権が発生する前に雇い止めされるケースが多い。本日の宮城県労働委員会の命令は、労働組合法および労働契約法の観点から、明確に法の順守を求めたものとして、その名を長く歴史にとどめるものである。
7 被申立人東北大学は、本命令の歴史的意義を真摯に受け止め、中央労働委員会への再審査の申立てや仙台地裁への処分取消しの訴えなどすることなく、東北大学職員組合との団体交渉に誠実に対応し、早期に全面的解決を図るべきである。
以上