統計で見る公共非正規職ゼロ政策の穴
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200106-00035372-hankyoreh-kr
2020/1/6(月) 8:22配信 ハンギョレJapan
〔写真〕全国公共研究労組の韓国科学技術情報研究員非正規職支部の幹部が先月18日、「子会社設立を通じた正規職反対」と「直接雇用」を要求する剃髪式を行った。非正規職支部は世宗市の科学技術情報通信省前で無期限テント座り込みをしている=世宗/イ・ジョンア記者
文在寅(ムン・ジェイン)政権の「公共部門非正規職ゼロ」政策に穴が空きました。正規職転換を名目に雨後の筍のように作られた子会社のためです。公共機関が子会社を作って正規職として採用することの何が問題なのでしょうか?中を覗き込むと、政策の意味を色褪せさせる対立要因が多く含まれています。
こんにちは。最近連載された「非正規職ゼロ宣言、その後」の記事を取材したハンギョレ探査チームのオク・ギウォです。上で示したように、今日は正規職転換政策の「痛い小指」である子会社乱立問題について話そうと思います。新年早々から複雑なテーマで読者の方々にお目にかかるので恐縮です。しかし、公共部門の労働政策はすべての労働者に影響を及ぼす重要な問題です。過去2カ月余り取材して作った5種類の統計で子会社問題を話します。
20万人対5万人。左は公共部門の正規職転換目標値で、右は子会社正規職に行った労働者の推算値です。正規職転換者の4人に1人が子会社に行きました。保健福祉部、産業通商資源部など子会社を作ることができない中央行政機関を除けば、公共部門の非正規職労働者の2人に1人が子会社に行ったとの統計が出ています。親会社の直接雇用になっても「本物の正規職」になったわけではないです。大多数の転換者が既存の正規職と年俸・昇給体系が異なる無期契約職になりました。朴槿恵(パク・クネ)政権時代に労働界が「中規職」と批判した職群です。多くの子会社と無期契約職を産んだ政策を「正規職化」と呼ぶのが適切なのか疑問です。
62社。現政権が始まってから公共機関が正規職転換を名目に設立したり設立する子会社の数です。問題は大部分の子会社が親会社の建物や施設を掃除・管理する「人力供給型用役(アルバイト)会社」のように運営されているという事実です。職員数300人未満の子会社も31社にもなりました。専門家は公共部門にこうした小規模な掃除・管理の子会社が数十も生じたのは例がないと評します。出資金規模が6億ウォン(約5600万円)台未満と脆弱で専門性の習得の可能性も低く、いつでもまた外注化され得るとの憂慮を覚えます。
87億。90余りの公共機関が子会社設立の過程で出費した民間コンサルティング費用です(約8億円)。政府が支援する無料の専門家コンサルティングもありましたが、公共機関は数億ウォンの民間コンサルティングを訪ねました。報告書の分析結果、子会社転換の結論を得るためにコンサルティング報告書を重複発注した機関もあり、合理的な根拠なしに子会社の結論に追い立てた「オーダーメード型報告書」も多数発見されました。非正規職の人件費の上乗せにブルブルと震えた機関が、子会社の結論を得るために数億ウォンのコンサルティング費用を容易に出費した姿に矛盾が感じられました。
206万ウォン(約19万円)。子会社に行った労働者の平均月給です。最低賃金に準ずる基本給に当直費と法的賞与金などを加えた金額です。正規職になったとしても、本物の正規職の賃金の半分にも満たない水準です。政府は正規職転換後の賃金が15%以上高まったと発表しましたが、内幕をよく見ると、ここ数年間で10%以上増えた最低賃金の引き上げ分を反映した結果でした。正規職転換のために多くの税金が浪費されるという主張は根拠が貧弱です。
1万人。子会社に行くことになる生命・安全職の労働者の数です。国家保安施設を守る特殊警備、発電施設整備、消防(施設)職の労働者の多数が、人件費上昇問題などを理由に子会社へと離職させられました。これは、国民の生命・安全に影響を及ぼす職群は直接雇用しなければならないという正規職転換ガイドラインと現政権の国政課題とも方向が異なります。セウォル号事件とキム・ヨンギュン死亡事故以後に政府が強調した生命・安全職群の重要性は、事実上掛け声に過ぎなかったとの指摘が出ています。
政府は四半期ごとに正規職転換の実績を発表します。去年7月基準で18万5千名の正規職転換が決まり、目標値の90%を達成したと明らかにしました。しかし、この数字には隠された不都合な真実があります。5種類の統計が示してくれるように、多くの公共機関が変形された外注化方法である子会社案を選択し、労働者たちは子会社に閉じ込められて非正規職である時と変わらない差別を受けていると言います。取材過程で会った子会社の労働者たちは「バイトの時と変わらない。これ以上希望はない」と口をそろえました。「子会社設立が望ましい正規職転換」という公共機関と政府の自己評価がむなしく聞こえる理由です。
オク・ギウォン探査チーム記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )