「ギグ・エコノミー」―自由な働き方と「搾取」のぶつかり (1/8)

「ギグ・エコノミー」―自由な働き方と「搾取」のぶつかり
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2020/1/8(水) 7:34配信日本の人事部

「ギグ・エコノミー」―自由な働き方と「搾取」のぶつかり

自由な働き方として注目されているが……
最近よくみかける「ギグ・エコノミー」とは

「ギグ・エコノミー」とは、インターネットを通じた単発の仕事でお金を稼ぐといった働き方や、そうした仕事でお金が回っている経済のことをいいます。「ギグ(gig)」とは、ライブハウスなどでギタリストやサックスの演奏者が、ゲストとして一度限りのセッションを行なうこと意味しています。

■ギグ・エコノミーが注目されてきた背景と最近の動向

ギグ・エコノミーが注目される以前から単発の仕事をする働き方はありましたが、テクノロジーの発達とともに、インターネットを介して仕事を見つけることが容易になり、単発の仕事で経済が回るという状況がより強くなってきました。また、社会の仕事の状況も変化し、以前は正社員を雇って実施していた業務も、外部の企業やフリーランスなどに外注することが多くなってきました。

また、自由な働き方を求める人も増えています。一般の会社員のように、決められた時間に出社し、決められた仕事をするのではなく、自分のライフスタイルに合わせて仕事と時間を選ぶ新しい働き方が好まれるようになりました。

しかし、ギグ・エコノミーのような働き方は、働く人にとって不利になりやすいという課題もあります。例えば、社会保障が十分ではなく、労働者が「搾取」される構造ができやすくなっています。

そのため、米国カリフォルニア州ではいち早く「ギグ法」が成立し、不当にギグ労働者に分類されている人を、明確な雇用体系の中に位置づけるような政策が打ち出されています。従来と同じ仕事をしているのに、社会保障を受けられず、保険も適用されない労働者を、保護しようという動きが出てきているのです。

近年、日本でもフリーランスになったり副業をしたりする人が増えており、労働法を見直す方針が打ち出されています。2019年現在の法律では、フリーランスや個人事業主は、労働基準法など一般の労働者を守る法律が適用されず、法定労働時間や、時間外労働の割増賃金、年次有給休暇、労働保険の保障などを受けられずにいます。これらの法律は、フリーランスなどにも適用すべきという見方が強まっていることから、法律の側がギグ・エコノミーに適用するよう変更されていくかもしれません。

例えば、これまで個人事業主には最低報酬額というものがありませんでしたが、2020年の4月から「同一労働同一賃金」制度が始まる流れで、最低報酬額の設置が検討されはじめています。

■ギグ・エコノミーと副業の違い?シェアリング・エコノミーや、クラウドソーシングなどとの関係

ギグ・エコノミー的な働き方と副業が一緒のものだと、混同されることがよくあります。しかし、ギグ・エコノミーとは単発の仕事を「受ける」ことで成り立つ働き方を意味しており、副業で服を仕入れて販売をすることや、カフェの営業経営などは含まれません。つまり、「自分が経営者になる」場合は副業ということができても、ギグ・エコノミー的な働き方とは異なるのです。

「シェアリング・エコノミー」も、ギグ・エコノミーとは異なります。一般にシェアリング・エコノミーとは、使っていない時間に自宅の空き部屋を貸し出す、車を貸し出すなど、ちょっとした副業として自分の「モノ」を貸し出す(シェアリングする)という働き方や、経済のあり方のことを意味しています。ギグ・エコノミーは、「モノ」を貸し出すというよりも、単発の仕事を請け負い、自分の労働力や時間を提供するといった意味合いを含んでいるため、シェアリング・エコノミーとの違いは明白です。

また、企業がインターネットを通じて労働者に仕事を発注することを「クラウドソーシング」と言います。このようは働き方をする人は、まさにギグ・エコノミーだといえるでしょう。ただし、クラウドソーシングとは、主に仕事を依頼する企業側の目線に立った名称であるのに対し、ギグ・エコノミーはその労働者や経済形態に注目した名称だといえます。フリーランスの働き方をより広い見方で見たとき、それをギグ・エコノミーだと捉えることもできるでしょう。
 

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