ユニオン・ショップ制度を「少数組合排除」に悪用 「サンプラザ」で“労労対立” (1/9)

ユニオン・ショップ制度を「少数組合排除」に悪用 「サンプラザ」で“労労対立”
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2020/1/9(木) 11:26配信 週刊金曜日

ユニオン・ショップ制度を「少数組合排除」に悪用 「サンプラザ」で“労労対立”

〔写真〕定期大会で気勢を上げるサンプラザ労組員たち。(提供/サンプラザ労組)

 堺市など大阪府南部を中心に約30店舗を展開するスーパー「サンプラザ」(本社・大阪府羽曳野市、山口力社長、従業員約2200人)で5年前に結成されたサンプラザ労組(自治労全国一般、約200人)が多数派の第二組合(UAゼンセン)を盾にした会社の組織攻撃に晒されている。連合傘下の組合間でなぜこんな紛争が続くのか。

 サンプラザ労組は2014年3月、低賃金・長時間労働のうえサービス残業代が過去2年分で2億円以上に達していたため、団体交渉でこの問題を厳しく追及。サンプラザ(以下、会社)は7月までに「とりあえず2カ月分を支払う」と約束した。ところが労組結成直後、店長らが組合役員を務める第二組合のサンプラザユニオンが発足。会社側は8月には「ユニオンの同意を得られない」と一転して残業代の支払いを拒否した。以降は管理職を通じ社員とパート(約2000人)を一挙に囲い込み、同年秋には第二組合とユニオン・ショップ協定を締結した。

 ユニオン・ショップとは、採用した労働者が一定期間内に労働組合に加入しない場合、あるいは組合を脱退または除名された時は解雇する義務を使用者に課す労使協定で、職場の過半数代表の組合が労使合意すれば成立する。組合にとれば解雇の威嚇で加入を強制できるわけだが、同社の場合はこれを第一組合の切り崩しに悪用し、大阪府労働委員会が5年で5件の不当労働行為救済命令を出す異常事態となっている。

【店長が組合加入を強要】

 特に大阪府労委で問題になったのは15年3月、パートの雇用契約書を改定して「ユニオン・ショップ協定に基づき、原則としてサンプラザユニオンの組合員になること」と明記し「はい・いいえ」のいずれかに記入するよう求めたことだ。面接した店長らは「はい、でいいよね」と言いつつ第二組合加入をパートに求めたばかりか、中には勝手にマル印をつけたり、いいえの回答を修正させたりするケースさえあった。

 大阪府労委は17年12月、店長にはパートの募集・採用、配置、昇給、準社員登用、契約更新など幅広い人事権があると指摘したうえ、雇用契約の更新に当たりユニオン・ショップ条項に同意するよう求めたことは、実質的に第二組合への加入を強要し、第一組合の弱体化をはかる不当労働行為に当たると認定、謝罪を命じた。会社はこれらの取り消しを求める行政訴訟を起こしたが、大阪地裁は今年10月、会社の請求を退ける判決を言い渡し、確定している。

 このほかにも府労委は、第一組合員に対する会社の懲戒処分や賃金差別、配置転換、残業禁止命令などについても「不利益扱いの不当労働行為」として是正を命じた。

 問題は相次ぐ救済命令にもかかわらず、会社が第一組合敵視の姿勢を変えず、不当労働行為と認定された店長らの組合勧誘活動も続いていることだ。サンプラザ労組の上西順一執行委員長は「同じ連合大阪に属する組合なのに、なぜUAゼンセンは私たちの組合を切り崩そうとするのか。連合には調整能力さえないのか」と憤る。

 西谷敏・大阪市立大学名誉教授(労働法)は、サンプラザユニオンについて「人事権を持つ店長は会社の利益代表者といえ、御用組合の疑いが強い」と指摘したうえ、特にユニオン・ショップ協定の悪用を厳しく批判する。

「労働組合は労働者が自由に結集しないと強くならないが、ユニオン・ショップ制度は個々人から組合加入、脱退の自由を奪い、企業別組合が緊張感を失って弱体化する最大の原因となっている。先進国では団結しない自由や勤労の権利を侵害する制度として、違法とされるか厳しく制限されるのが一般的だ。今回の事件では組合員の統制強化のみならず既存労組をつぶす手段として積極的に悪用しており、ユニオン・ショップ協定の最悪の利用形態といえるだろう」

 UAゼンセンはそうまでして、なぜサンプラザの経営者に加担するのか。大阪府支部の担当者は「個別労使の問題であり、コメントできない」と取材に応じなかった。

(村上恭介・ジャーナリスト、2019年12月13日号)

 

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