個人請負で就業確保? 今年の労働法改正 年金改悪視野に (1/15)

個人請負で就業確保? 今年の労働法改正 年金改悪視野に
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連合通信 2020/01/15

 2020年も、働く・働かせるルールの見直しが目白押しです。最大の焦点は70歳までの「就業確保」。業務委託でまかなうという異質な政策が盛り込まれています。どのような狙いがあるのでしょうか。
70歳までの就業機会確保を企業の努力義務とする法改正は、さまざまな法案を合わせた一括法案として国会に提出される予定です。
65歳までの雇用確保が法律で義務付けられたのは2013年。定年延長も進んでいないのになぜこんな見直しを急ぐのでしょうか。
政府は昨年、未来投資会議(議長・安倍首相)が示した成長戦略で、「全世代型社会保障への改革」を策定。年金、医療、介護の見直しとともに、高齢者の活用を打ち出しました。
その内容は(1)定年廃止(2)70歳までの定年延長(3)継続雇用制度導入(4)再就職支援(5)フリーランス契約への資金提供(6)個人の起業支援――などを掲げました。昨年末、ほぼこの通りの内容が労働政策審議会で追認されました。

中でも(5)と(6)は勤め先との業務委託契約で働く「個人事業主」の扱い。残業上限規制や最低賃金、労災補償などのセーフティーネットは受けられません。注意力や体力が低下することで労災被害に遭いやすく、保護がより必要な年齢なのに、です。

兵糧攻めで働かせる!?
経済産業省が主導する今回の制度見直しの底流には「雇用によらない働き方」を広げ、社会保障コストを減らす狙いがあると、伍賀一道金沢大学名誉教授は指摘します。
特に業務請負による就業確保については「AI(人工知能)化の進展で近い将来、人余りとなる。必要な時に必要な働き手を細切れに使う働かせ方を広げるため、雇用から個人事業主化への切り替えに誘導する意図があるのではないか」と警鐘を鳴らします。
政府は年金支給開始の選択幅を75歳に引き上げる方向。いずれ全てを70歳に引き上げる布石と見るべきでしょう。収入を絶たれ、65歳を過ぎても働かざるを得ず、労働者としての保護も受けられない。将来不安は一層深刻化します。国会での十分な議論が必要です。

労働者保護破壊へ再始動
そのほか、改正民法の4月施行に合わせて、不払い残業代など賃金債権の消滅時効を現行2年から「当分の間3年」とする労働基準法改正が提案されます。民法が定める「5年」への道筋をきちんと示すことが必要です。
日雇い派遣の規制緩和は労政審で検討中。マージン率の公表や、派遣先へのみなし雇用規制など、民主党政権時の規制強化を狙い撃ちにした全面的な見直しが狙われています。
厚労省によるデータ偽装が批判され、お蔵入りとなった裁量労働制の営業職への拡大も、春に再調査結果が示されます。過重労働を招く制度。近い将来の法整備が視野にあります。違法解雇でも労働者を追い出せる解雇の金銭解決制も検討が続いています。

 

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