働き方改革のしわ寄せ 中小企業が直面する「時短ハラスメント」の悩み
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2020/01/16(木) 9:26配信日刊ゲンダイDIGITAL
働き方改革のしわ寄せ 中小企業が直面する「時短ハラスメント」の悩み
「働き方改革」の負の部分のしわ寄せが…(C)日刊ゲンダイ
働き方改革関連法案の施行がこの4月から、中小企業を含めいよいよ本格化する。すでに大企業の一部には昨年4月から施行されているが、大手、中小企業とも政府の目指す働き方改革実現には、予想以上の困難とハードルの高さがあるようだ。
2018年6月に成立した働き方改革法案の柱は3点。?長時間労働の是正、?正規、非正規の不合理な処遇差の解消――同一労働同一賃金の推進、?多様な働き方の実現だ。
帝国データバンクは働き方改革の取り組みについて、全国2万3099社に調査(18年8月)し、約1万社から回答を得ている。それによると取り組みに前向きな企業は63%、最も重視する目的は従業員のモチベーション向上で約26%だった。
少子高齢化が進み15歳から64歳までの生産年齢人口の減少や、景況感の後退でとくに中小・零細企業ほど人手不足の深刻化は進んできている。こうしたなか、働き方改革の進み具合はどうか。帝国データバンク情報統括課の飯島大介副主任がこう述べる。
「労働者側にとって本来長時間労働を是正し、効率化の成果を賃上げにつなげたいところですが、現状ではそうした動きはほとんど見られません」
月々の収入に残業代を当て込んでいる労働者は少なくない。そのため、働き方改革で残業代が削減され収入が減り、生活が苦しくなったという声も多く聞かれるのだ。
大企業が先行して長時間労働の是正に取り組むなか、下請けの中小企業への下請けいじめも依然懸念されているという。労働問題に詳しい千葉商科大学の常見陽平専任講師がこう指摘する。
「大企業が進める長時間労働是正でいま中小企業に起きているのが時短ハラスメントです。大企業からの丸投げで、中小企業は仕事量を減らさず時短に追われ、結果的にサービス残業につながる。さらに管理職にしわ寄せが行く。管理職が仕事を抱え込み、さらには部下への仕事のやりくりに悩み健康を害するという問題が高まります」
政府が労働者の格差是正のために進める、同一労働同一賃金問題に対してはこう述べる。
「理不尽な待遇の格差をなくすための正論のように聞こえます。しかし一方でベテラン社員や正社員の賃金を上げないリスクがある。労働条件の改善は、その段階で正社員の待遇を下げざるを得なくなる。これは働き方改革で社員の労働意欲を拡大する目的と逆行し、社員のモチベーションを維持することは難しくなる。働き方改革は負の部分が目立ち過ぎます」
大企業が働き方改革を進めるしわ寄せが、4月から施行される本格的改革で中小企業をさらに追い込む気がしてならない。
(ジャーナリスト・木野活明)
【関連情報】
帝国データバンク 2018/9/14 働き方改革に対する企業の意識調査
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p180904.html