看護師の地方派遣可能に 厚労省方針、人手不足を解消 (1/17)

看護師の地方派遣可能に 厚労省方針、人手不足を解消
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2020/1/17 18:00日本経済新聞 電子版

厚生労働省は看護師や助産師の人手不足で困っている地域で人材派遣を可能にする方針だ。看護師は職員として採用されるとの原則があり、例外措置として認める。地方や島しょ部などでは看護師らが足りず、診療所などの閉院につながることがあるためだ。看護師が派遣として働けるようにして、地域の医療体制を維持できるようにする。

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労使の代表や学識者で構成する労働政策審議会(厚労相の諮問機関)で、2020年度中に労働者派遣法で定めるルールについて議論を始める。早ければ21年度を念頭に、厚労省が必要と認める地域については看護師らの派遣を認める。

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医療に従事する人は現在、派遣を禁止しているが、一部で例外を認めている。医師については地方や島しょ部など常駐が難しい地域などを厚労省が指定し、派遣を可能としている。看護師や助産師、薬剤師、放射線技師、栄養士なども医師に近い形で認める。

背景には、医療は医師と看護師らが連携して治療にあたることが最適との考え方がある。派遣の場合は短い間に担当者が代わるため、質の高い医療のためには望ましくないとされてきた。

ただ離島や山間部の病院は医師や看護師の人手が限られる。月に数回の勤務や、退職者が出たときのつなぎで勤務してくれる人を派遣で確保したいという要望は多い。現在も正規職員として雇う予定があるといった場合や、産休などを取得した職員の業務については派遣を認めている。厚労省は過剰労働を防ぐための管理者の責任などを細かく定めたうえで、地域医療の維持のための派遣もできるようにする。

看護師や助産師などの看護職員数は最新の統計である16年末時点で166万人。育成や離職防止の効果もあり、5年間で11%増えた。一方で看護師などの有効求人倍率は19年11月に2.37倍と、1.5倍程度で推移する全産業を大きく上回る。

団塊の世代が後期高齢者になる25年には約196万〜206万人の看護職員が必要とされ、このままでは3万〜13万人が不足すると試算される。限られた看護師が都市部に偏れば、地方では一段と人手不足に陥る可能性が高い。

厚労省は19年、医師について医療ニーズに対する充足状況を数値化した「医師偏在指標」を初めて公表した。地域ごとの患者の流出入数や人口構成などを加味すると、47都道府県で最も医師が足りないのは岩手県。新潟県や青森県、福島県など高齢者の比率が高い地域で医師が足りない。

18年に改正された医療法・医師法では、医師が足りない地域への派遣を促すことなどで、医師の偏在解消を目指すとしている。厚労省は看護師でも同様の派遣の仕組みを設け、限られた担い手で効率よく医療を提供できる体制づくりを目指す。
 

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