服部信一郎 毎日新聞 「橋下再建案85%世論調査」に思う

「毎日新聞」は6、7両日、大阪府の有権者を対象に、橋下徹知事の財政再建に対する賛否を問う電話による世論調査を実施した。5日に発表した財政再建案について、「賛成」は85%で、「反対」の12%を大きく上回った。ゼロベースで事業を見直し、担当部局や市町村長との議論を公開するなど異例の手法で進めてきた財政再建に、府民は大きな期待を寄せている。橋下知事についても、「支持する」が66%で「支持しない」の6%を大幅に上回った。」と、8日報じた。
その3面で、新藤宗幸・千葉大教授は、「『痛み』正しく伝わっていないとコメントしている。知事選挙の余韻が冷めていないこともあるが、橋下知事が財政改革をするために府民に求めた『痛み』の内容が正しく伝わっていない証しだ。高い支持率を誇った小泉純一郎元首相は、在任中に後期高齢者医療制度の導入をきめたが、制度が施行されて不満が明らかになると、与党の支持率は急落した。同じことは大阪でも起こりうる。有権者は抽象的なイメージだけで、改革の是非をきめるべきでない。とコメントされている。同感である。現に、財政再建案にある来年度からの医療費助成削減には、なんと75%が「反対」を表明している。教育、医療、福祉を削減することが、橋下知事の新自由主義自治体論のドグマに座っているだけに、府民との矛盾が今後に高まらざるを得ない。
また、世論調査では一般職員の平均12%、退職金5%カットに対して、「賛成」が83%と抜きん出て高い。しかし労働者に責任はあるのか、民間でも労働基準法91条での「制裁規定」では10%以上の減額をきびしく規制している。しかも、府の職員は「改革」上、責任が問われ、制裁されなければならないのかである。民間でも経営の行き詰まりと賃下げは別論議である。しかも、府は破綻する状況では決してない。財政ストライキ権も団体交渉権、労働協約権も奪われ、今国会の国家公務員基本法でも規定されなかった国際的にも恥じるべき労働基本権のお粗末なまま、これほどの不利益変更を知事サイドが決める権限は法律的あり得ないと思う。府民は、行政サービス低下、一部官僚の不正や汚職への怒りを公務員賃金に向けているのかも知れないが、誤っている。地域経済振興でも橋下知事は、切り捨てたが、今年度だけで345億円の人件費削減は、大阪を最悪の地域経済に落とし込むことにつながる。
世論調査の一端には荒んだ心が現れているのだろうか。人件費削減だけでなく、府立高校の教務補助員(非正規雇用)305人が賃下げで、1日5220円の賃金されたうえ、来年度全員解雇である。大阪府はワーキングプアをつくり出すことに力を入れるという大きな誤りを犯している。これも民間、地域での非正規雇用の拡大(現在でも大阪は全労働者の40%が非正規労働)に火をつけるであろう。
公務員攻撃で大阪市の市政改革は成功したかのようであったが、市民の反撃にあって、医療など市民要求の前進もみられる。常套手段となっている「公務員攻撃」をテコにした福祉・教育・医療への攻撃、橋下知事も取り入れているだけに、いずれ府民とともに公務員攻撃に反撃する世論をつくりだしたいものである。
(服部信一郎・代表世話人。大阪労連副議長)

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