北海道新聞社説 貧困率最悪 総合的対策待ったなし

 2011年7月24日 北海道新聞 社説

 全国民の中で生活に苦しむ人の割合を示す「相対的貧困率」が2009年の厚生労働省の調査で、過去最悪の16・0%となった。
 国民の6人に1人が、年間112万円未満で生活していることになる。生活保護費の水準にすら達しない金額だ。
 経済協力開発機構(OECD)の2000年代半ばの貧困率調査でも、日本は加盟30カ国中、4番目に悪かった。この格差を驚く人も多いのではないだろうか。
 民主党政権は3年前、貧困解消に向けた取り組みとして初めて06年の貧困率を公表。2回目となる今回はそれより、0・3ポイント悪化した。
 08年のリーマン・ショックによる景気悪化の影響があったにせよ、対策が思うように進んでいない。
 憲法は健康的で文化的な最低限度の生活を国民に保障している。
いつまでに、どういう方法で、どれだけ貧困率を改善するのか。政府は、数値目標を設けるなど実効力のある対策を進めるべきだ。
 貧困率が悪化したのは、所得の低い65歳以上の高齢者や非正規労働者の割合が増えたためとされる。
 非正規労働者は全労働者の3分の1を超えた。小泉純一郎政権が規制緩和の一環として、労働者派遣法の対象業種を拡大して以来、増加傾向が続いている。
 中でも、問題があるのは登録型派遣だ。派遣労働者の約7割を占めるが、仕事があるときだけ雇用され、身分が不安定だ。
 政府は行き過ぎた規制緩和を見直すため昨年、通訳など26の専門業務を除いて登録型派遣を禁止する労働者派遣法改正案を国会に提出した。
 規制緩和によって労働現場に何が起こったのか。十分検証しながら、少しでも雇用改善につながるような論議を国会に求めたい。
 道内などにみられる、最低賃金が生活保護費を下回る逆転現象の解消も急がれる。
 最低賃金の引き上げは、企業にとっては負担が大きい。半面、労働者が消費に回す金が増え、景気浮揚効果もある。雇用し、労働に見合った賃金を支払うことが、地域や社会の向上につながる。それこそが企業の社会的責任だろう。
 非正規労働者は、厚生年金や健康保険が適用されない場合がほとんど。政府の「社会保障と税の一体改革案」でも正規労働者並みの扱いを求めており、早期の実現が必要だ。
 東日本大震災により、被災した企業から雇い止めされる派遣労働者も増えている。手をこまねいていては、貧困率はさらに悪化する。
多くの政策を網の目のように張り巡らすことで、困窮にあえぐ人を救いたい。

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