過労死「まず遺族から声を」…今年10年迎えた学習会、全国から47人議論

産経ニュース 2011年7月18日

過労死・過労自殺の遺族らが苦悩や近況を語り合う「夏の一泊学習会」がスタートして今年で10年目を迎え、17、18日の両日、京都市内の旅館で行われた。「大阪過労死を考える家族の会」の呼びかけで、東京や広島を含む全国の遺族ら47人が参加。過労死問題に詳しい弁護士による講演や、未明まで話し込む“エンドレス交流会”を通じ、過労死防止への取り組みを誓い合った。

厚生労働省の統計では、平成22年度に労働災害(労災)と認められた過労死は113件、過労自殺は65件。いずれも認定率は約4割にとどまり、ここ数年は低迷していることから、申請自体をあきらめているケースも多いとされる。

こうした状況の中、遺族は労災の申請を準備中だったり、認定を求める行政訴訟を争っていたりと、さまざまな段階でそれぞれの苦悩に直面している。一泊学習会は、遺族が社会から孤立することなく思いを共有できるよう、14年から毎年この時期に行われてきた。

学習会のメーンは、畳敷きの広間で深夜から未明まで続くエンドレス交流会。「訴訟の相手が憶測だけの主張をして傷ついた」「息子の同僚に電話しても着信を拒否され証言が得られない」などと悩みを語る声は途切れることなく、泣き崩れる遺族の姿もみられた。

これに先立つ講演では、松丸正弁護士が「遺族の戦いによって労働行政は変わってきた。まず遺族から声を上げよう」と呼びかけ。岩城穣(ゆたか)弁護士は「過労死防止基本法」を制定する必要性を訴えた上で「遺族が語り部となって活動の先頭に立ってほしい」と訴えた。

IT企業に勤める息子を過労自殺で亡くした初参加の母親(58)は「自分たち夫婦だけで悩んでいたが、解決への糸口をつかめた」。父親(58)は「気持ちが萎えそうなときだったので、力をもらえた」と話した。

「全国過労死を考える家族の会」代表の寺西笑(えみ)子(こ)さん(62)=京都市伏見区=は「過労死・過労自殺の遺族は、会社への怒りを覚える以上に自分を責めている。思いをはき出すことがなにより大事で、経験者の話を聞くだけでも一歩を踏み出せる」としている。

一泊学習会は来年夏も行われる予定。問い合わせは、あべの総合法律事務所内の「大阪過労死を考える家族の会」((電)06・6636・9361)。

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