東京新聞 2013年2月25日
障害者の雇用を後押しする仕組みをどう強めるのか。労働政策審議会が近く考え方を示す。働く意欲に応え、地域での自立と社会参加を促すのは支え合い時代の要請でもある。経済界の責任も重い。
障害者の就労対策の土台は障害者雇用促進法だ。官民を問わず事業主に一定割合の障害者を雇うよう義務づける法定雇用率制度が大きな柱になっている。労政審はこの法律を見直したい意向だ。
国が批准を目指す国連障害者権利条約を踏まえ、障害者の差別を禁止するルールを新しい柱として据えようとしている点に期待したい。事業主に意識改革を迫る契機となるはずだ。
車いすだから、盲導犬を連れているから、介助者の付き添いが必要だから…と、障害を理由に門前払いをしたり、不利な取り扱いをしたりするのはご法度となる。
最近でも新潟県が身体障害者の職員の募集に当たり、自力で通勤でき、介助なしに仕事ができる人という条件をつけた。面接試験での点字や手話通訳、筆談には応じないとくぎを刺してもいた。
官公庁の問題意識がこの体たらくでは、負担を嫌う民間企業は推して知るべしだろう。
募集や採用から労働時間、賃金や昇進、福利厚生、退職まで、事業主は雇用慣行に潜む差別を一掃する覚悟が問われる。
障害者が働きやすいよう環境を整え、支援する配慮も求められる。それを欠いても差別と見なされる。存分に能力を引き出すような発想や知恵こそが大切になる。
一方、身体障害者と知的障害者に限られている事業主の雇用義務の対象に、精神障害者を加えるかどうかが焦点となっている。
四月から従業員五十人以上の企業は2・0%以上の障害者を雇わなくてはならない。精神障害者が算入されると、法定雇用率が跳ね上がるとして経済界は反発する。
しかし、精神障害者の昨年度の新規求職者数は四万九千件近くに達し、二〇〇二年度の七・八倍と突出して増えている。就労意欲に応える受け皿づくりは急務だ。
障害者団体「きょうされん」の直近の調査では、障害者のほぼ十人に一人が生活保護下にあった。全国平均の六倍超の受給率だ。障害者が働くようになれば社会保障コストは軽くなる。
一九九九年から法定雇用率を守った企業は五割に満たない。積極的な企業への援助を手厚くして底上げを図るべきだ。医療や福祉から雇用へと流れを加速させたい。