日本は若者が生きづらい社会になっていないか。
昨年の自殺者は15年ぶりに3万人を切った。20代も前年より減ったが、人口あたりの自殺率を98年と比べると2割も高い。若い世代の死因の1位が自殺なのは先進7カ国で日本だけだ。
いちど落ちたらはい上がれそうもない社会への、若者からの三下り半(離縁状)。自殺を防ぐNPO「ライフリンク」の清水康之代表はそう見る。
若者から見限られる社会なんて悔しいではないか。つらい時にも支えてくれる人はいるし、何度でもやり直しは利く。そう実感できる手立てを講じ、三下り半を引っ込めてもらおう。
自殺には世代や職業などによって特徴がある。ライフリンクが遺族523人から聞き取った調査はそう教えてくれる。
10〜20代の女性は未遂歴のある人が3人に2人と多い。また大半は医療機関へ相談に訪れていた。若い男性は未遂は少ないが相談には半数が訪れていた。
裏返せば、支援につなげる糸口はあるともいえる。ただ、医師と話せる時間は短く、通院も間があきがちだ。医師は守秘義務から、外との連携が難しい。
秋田市のNPOが営む「ユックリン」はヒントになる。心を病む患者どうしが話し合える場だ。医者以外の話し相手と居場所ができて、悩んでいるのは自分だけではないと思える効果は大きい。本人に病院や担当医の名を書いてもらっており、何かあれば医師と連絡を取れる。
医療機関のほかにも官民の相談機関はたくさんある。が、聞き取り調査では若い世代で自殺前に訪れた人は少なかった。相談窓口を検索できるサイトもある。一人でも多くの危険をつかむため、周知を進めたい。
就職失敗による自殺も気になる。政府統計では、10〜20代は5年前の2・6倍だ。
幼い頃からいじめられないようにキャラを作り、就活の前には履歴書に書けるボランティアを探し回る。そうやって周りの目を気にして生きてきたあげく何十社も断られ、自分を丸ごと否定されたと思ってしまう。多くの若者と接してきた清水さんはそんな心理を見て取る。
やるべきことは多い。
大企業か非正規かの二者択一ではない、多様な働き方ができる社会に変えていくこと。
たとえば、借金を抱えてもやり直せる債務整理という方法がある。そんな具体的な知識を学校で学べるようにすること。
転んでもかまわない。もう一度立てばいい。そう思えるのは杖があってこそだ。