畠山 奉勝 2013.4.19
今朝の日経新聞や読売新聞で、安倍首相が今日19日、経済三団体に要請する内容が載っていた。
「〈1〉子どもが3歳になるまで、男女ともに育児休業や短時間勤務を可能にする〈2〉大学生らの就職活動の開始時期を大学3年生の3月からに遅らせる〈3〉全上場企業で役員に1人は女性を登用する――が柱。女性や学生の就労環境の改善を進めることで、安倍政権の経済政『アベノミクス』を雇用面で下支えする狙いがある。」
この三項目、いずれも大賛成であるが、中でも「子どもが3歳になるまで、男女ともに育児休業や短時間勤務を可能にする」という案には称賛を送りたいし、「安倍さん、なかなかやるなあ!」と率直に思う。つい3年ほど前に「パパ・ママ育休プラス」など改善されたばかりなのに、一気に大幅前進案である。もっとも、短時間勤務は一定条件のもとでは現在でも子が3歳に到達するまでは措置を講ずることが規定されているが。ただ、ここは安倍さんの心意気を評価したいと思う。
日本の女性は昔ほどではないにせよ、結婚して子どもができれば勤務を継続する人はまだまだ少数派である。有能で仕事に生き甲斐をもっていても、安心して勤務できない労働社会だからである。十分な数と低料金の保育所が設けられていないことに加え、夫たる男性が早く帰宅することができないため、夫が家事・育児を分担することができていないという状況にあることがその核心課題である。このような環境で女性が働くことは、過酷といっても言いすぎではない。
厚生年金制度が理由であるが何にせよ高年齢者を65歳まで雇用の場に留める法制が整った今、残る大きい問題は仕事のスキルを有した女性を労働現場へ戻すことが、少子高齢化が進行している日本の労働社会の最大のテーマである。今、小さな子どもと一緒に家庭に引っ込んでいる女性の多くは、頭の回転も速いしスキルも持っているバリバリ働ける人が多いのだ。
「育児休業3年」を実現しようとすれば、労使ともに負担は増す。しかし、この問題は労使の経済的負担と天秤にかける問題ではない。子どもができても安心して働くことができる社会環境を構築することは、日本人全体が当然負うべき責任である。結婚後の厳しい環境に不安を抱くために結婚しない、あるいは結婚しても子どもは作れないという現状を何とも思わない人びとに対しては言葉もないが・・・。
3年間休業できる、また、例えば午後3時に仕事を終えて託児所へ子どもを迎えにいくという短時間勤務、これらを実現すれば日本の労働社会は生き生きと活性化されるし、彼女たちの働きの成果が産業界に大きい果実をもたらせるはずである。女性にとって、「働くことは楽しいこと、幸せなこと」を実感できる時代が訪れそうな予感がする。
日本はGDPでは世界3位と「先進国」らしいが、労働社会のdecencyという観点では「世界第一級の後進国」なのである。ここは、安倍さんのエネルギーとパワーに期待したい。
安倍さんにもう一つお願いしたいこと。それは、「男性を早く帰宅させて」ということ。労働時間規制についても、経済界の反発を跳ね返して頑張って欲しい。それができれば、安倍さんは歴史に名を刻む宰相になる。