秋田魁新報 社説:パワハラ指針案 労働者第一に再検討を (11/7)

社説:パワハラ指針案 労働者第一に再検討を
https://www.sakigake.jp/news/article/20191107AK0016/
秋田魁新報 2019年11月7日 9時45分 掲載

 女性活躍・ハラスメント規制法に基づき、企業がパワーハラスメント防止対策を義務付けられるのを控え、厚生労働省が対策の指針案を公表した。厚労省は年内の指針策定を目指しているが、経営者側が大筋賛成しているのに対し、労働者側は反発を強めている。

 指針案は、パワハラに「該当しない」例を列挙している。労働者側は「使用者側に言い訳を許し、かえってパワハラを助長しかねない」と主張。法はパワハラ防止が目的であり、不当な行為から労働者を守ることが第一である。誤解を招く恐れがある例示は削除することも含め、指針案を再検討することが求められる。

 規制法は大企業は来年6月から、中小企業は2022年4月から適用される。指針案はパワハラを、暴行・傷害の「身体的な攻撃」、脅迫・暴言による「精神的な攻撃」、隔離・無視による「人間関係からの切り離し」、不要なことや遂行不可能なことを強制する「過大な要求」、程度の低い仕事を命じる「過小な要求」、私的なことに過度に立ち入る「個の侵害」の六つに分類。それぞれに該当する例と、しない例を示した。

 精神的な攻撃の例としては、人格を否定するような発言をしたり、必要以上に長時間にわたる厳しい叱責(しっせき)を繰り返したりする行為が挙げられる。だが、遅刻や服装の乱れなど社会的ルールやマナーを欠いた言動が見られ、再三注意しても改善されない場合や、業務内容に照らして重大な問題行動をした場合に、強く注意することは該当しないとされた。

 問題は、業務上必要な指導とパワハラの線引きが難しい点にある。「社会的ルール」「問題行動」「強く注意」などの意味する内容は明確とは言い難い。企業側が問題があると判断すれば、厳しく叱責してもパワハラには該当しないと考える場合が出てこないだろうか。

 また、管理職である労働者を退職させようと、誰にでもできる業務を行わせるのは過小な要求に当たるとした。一方、経営上の理由で一時的に能力に見合わない簡易な業務に就かせるのは過小な要求ではないという。「経営上の理由」を口実にして、過小な要求を行う企業が出てこないか懸念が残る。

 パワハラに該当するかどうかは一つ一つの事情や経緯、人間関係などを慎重に検討して判断すべきである。該当しない行為を例示することが、パワハラまがいの行為に口実や根拠を与える結果となっては本末転倒だ。

 就職活動中の学生が面接時に受けるセクハラ、労働法制で保護の対象にならないフリーランスが取引先から受けるパワハラなどへの対応については、指針案は「社内方針で示すことが望ましい」などと記すにとどまった。実効性に疑問が残る。指針の内容をもう一歩踏み込んだものにしたい。
 

この記事を書いた人