公人としての見識と品位が問われる発言だ。
日本維新の会の橋下共同代表が、いわゆる従軍慰安婦について、兵士によるレイプを抑え、「軍の規律を維持するには当時は必要だった」と記者団に語った。
さらに、橋下氏が在日米軍幹部に、風俗業の「活用」を働きかけていたことも明らかになった。
橋下氏は15日、慰安婦について「いま必要とは一切言っていない」と釈明した。戦時中、旧日本軍以外にも類似した存在があったという指摘は、その通りだろう。
とは言え、軍に慰安婦が必要だったと声高に主張することが、女性の尊厳を軽んじるものと受け止められても仕方あるまい。
橋下氏の発言に対し、稲田行政改革相が「慰安婦制度は女性の人権に対する侵害だと思っている」と述べたように、強い反発の声が上がったのも当然である。
今回の発言は、歴史認識をめぐる安倍内閣の姿勢に関連して、記者団の質問に答えたものだ。
慰安婦問題に関する1993年の河野官房長官談話には、資料的な根拠もないまま、日本の官憲が組織的、強制的に女性を慰安婦にしたかのような記述がある。そうした誤解を招くような記述は、事実を踏まえた見直しが必要だ。
橋下氏は河野談話の見直しが持論である。だが、戦時中の慰安婦の存在を「必要だった」と認めることは、逆に国際的にも誤解を広げることになるのではないか。
橋下氏は、日本政府が1965年の日韓基本条約で慰安婦問題は法的に解決済みだとしていることを批判し、元慰安婦に「配慮すべきだ」とも語っている。だが、何ら具体策もないのに、こうした主張をするのは無責任である。
一方、「風俗業活用」発言は橋下氏が最近沖縄を訪問した際、在日米軍幹部に進言したという。
兵士の性をどう制御するかは、いつの時代も軍の課題だとして、日本で合法的に行われている風俗業を活用してはどうかと語った。幹部は、軍では禁じられていると答え、この話を打ち切った。
米軍の規律に対する無理解であり、侮辱とも受け止められたのではないか。米国社会では、女性の尊厳が重んじられている。日本の歴史問題の中でも、とりわけ慰安婦問題に対する視線が厳しい。
沖縄などからも、女性を道具として扱う暴言と批判の声が上がったのももっともだ。