朝日社説 福島とともに−−脱原発ビジョンに学ぶ

asahi.com 2011/06/21

地震と津波の被害に加え、収束が見通せない原発事故。放射線不安の広がり。人口200万のうち10万人が避難を続け、3万人以上が県外に出た。

未曽有の複合災害に、福島県の人々が、長く、厳しい闘いを強いられている。

県の復興ビジョンを議論する有識者の委員会が、「脱原発」を明記した基本方針案をまとめた。「原子力に依存しない、安全・安心で持続的に発展可能な社会」を築くと宣言する。

原発との決別を発信することで、風評被害や人口流出危機を乗り越えようと、委員たちは考えた。「脱原発を掲げないと、廃炉にあたる福島原発の作業員が誇りを持てない」との指摘もあった。佐藤雄平知事は提言を尊重すると表明した。

浮かび上がるのは、苦しみの中、問題を前向きに引き受けねば再生はない、という重い決意だ。「世界でローマ字のFukushimaと名指しされている。受け身では負けてしまう」と、委員の一人は語った。原案にあった原子力災害への「対策推進」という言葉も、「克服」に改められた。

放射性物質との闘いは、原発を冷温停止させた後も続く。安心と安全をどう守るか。県は放射線の住民への影響について、長期の大規模調査に乗り出す。

土壌や水の浄化も、生業を取り戻すための大きな課題だ。農地にヒマワリの種をまく除染実験が始まっている。信頼度の高い放射線環境影響評価の仕組みづくりも必要だろう。

放射線医学とかかわる医療機器産業を興す、国際研究機関を誘致する、といったアイデアが出ている。世界の知恵や資金を呼び込みたい。

基本方針案では、再生可能エネルギーの推進により、新たな社会システムを提示することも柱に据えられた。

広い県土には原発抜きでも多様な自然エネルギーの可能性がある。計画的避難区域になった飯舘(いいたて)村は、環境保全を軸にしたスローライフ提唱で知られた。地域資源を生かした地産地消・循環型の社会は、日本がめざすべきモデルではないか。

家族を含め3万人の生計を支えてきた原発に、新しい産業が代わりうるか、という難題はある。だからこそ、福島の復興ビジョン実現に、最大限の支援を惜しむまい。掲げられたことは本来、政府が中心となって発信すべきテーマのはずだ。

福島を助けようと言ってきた私たちが、逆に福島に教えられている。実は傍観者でいたことに、反省を迫られている。

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