秘密保護法案:安倍政権、教訓忘れ 「数任せ」に逆戻り

毎日新聞 2013年12月06日

 自民、公明両党は5日、参院国家安全保障特別委員会で特定秘密保護法案の採決強行に踏み切った。国会審議は堂々巡りを繰り返すばかり。修正を重ねても、法案に対する疑問が解消されたとは言い難いのに、政府・与党はかたくなに今国会での成立にこだわる。強引な国会対策が災いして失速した第1次安倍政権の教訓はこのまま風化してしまうのか。「決める政治」(安倍晋三首相の所信表明演説)の代償を懸念する声は、政権内からも漏れている。

 「選挙が近かったら、自民党から『そこまでやらなくても』という声が出たかもしれない」。首相周辺は5日、特定秘密保護法案を巡る国会対策が首相官邸主導だったことを暗に認めた。同法案が先月末に参院で審議入りして以降、官邸サイドは直接、参院自民党にはっぱをかけ続けた。

 政府・与党は当初から「今国会での成立」で足並みをそろえ、審議日程が窮屈になっても方針を押し通した。そのあおりで、政府が成長戦略の柱と位置付ける国家戦略特区法案の会期内成立が怪しくなると、参院内閣委員会の民主党委員長を解任する強硬手段にも出た。

 特定秘密保護法案の慎重審議を求める世論は根強い。にもかかわらず、安倍政権が強引に成立を図るのは、4日に発足した国家安全保障会議(日本版NSC)を早期に機能させたいという政策的な狙いがある。さらに、仮に継続審議にした場合、来年の通常国会での審議は2014年度予算成立後になり、4月の消費増税と重なって批判が増幅されかねないとの思惑も透ける。

 「(1999年に)通信傍受法案が成立したときは、今日よりもはるかに激しい反対運動で、国会を取り巻く反対の輪はこんなものじゃなかったと記憶している。『盗聴法案』と言われたが、成立から1〜2週間で国民にも分かっていただき始めた」

 菅義偉官房長官は5日の記者会見で、特定秘密保護法案もいずれ国民の理解は得られるという認識を示した。4日の参院安保特別委で国連平和維持活動(PKO)協力法を引き合いに出した首相と同じ論理だ。

 参院本会議が続いていた4日夜、首相は東京都内のステーキ店で菅氏や自民党の河村建夫選対委員長らと会食。「参院(自民党)が頑張っているのに、おれたちだけすまないなあ」と余裕をみせた

一方で、第1次安倍政権は教育基本法改正(06年)や、憲法改正手続きを定めた国民投票法(07年)などを巡る国会運営が野党から「強引」と批判され、結果的に、07年参院選の惨敗につながった経緯がある。

 共産党の志位和夫委員長は5日の会見で「第1次政権当時の『数の暴走』『数の暴力』の姿に戻った。今回の強行劇は、安倍政権の終わりが始まったということだ」と批判した。

 「支持率がどう変わるか。それが一番怖い」(政府関係者)。数の力を背景にした強気の政権運営は、危うさもはらんでいる。【中田卓二】

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