河北新報社説: 24時間営業見直し/外食チェーンだけの問題か

河北新報 2014年10月4日

 外食最大手ゼンショーホールディングスが1日から、牛丼チェーン「すき家」の約6割の店舗で、午前0〜5時の深夜営業を中止した。従業員の深刻な過重労働問題で第三者委員会の改善提言を受け、過酷な勤務体制を見直した結果である。

 すき家の特殊事情があっての方向転換ではあるが、「消費者の利便性向上」の名の下に進んだ「24時間営業」の負の側面を示した点で、社会全般への問題提起の意味合いも持つ。

 同じように深夜営業の縮小が相次ぐ外食産業に限った課題と片付けず、私たちが享受する24時間化社会のありようを考えるきっかけと受け止めたい。

 すき家は深夜営業を1人で担当する「ワンオペ」という勤務体制を敷き、月500時間以上の勤務や「自宅に2週間帰れない」と従業員が訴える過重労働の一因になっていた。

 第三者委の提言に従い、深夜営業の2人勤務体制を目指したものの、必要なアルバイトなどが集めきれず、2人勤務では採算が合わない店舗もあるため、看板だった全店舗24時間営業の継続断念に追い込まれた。

 全産業で深刻化する人手不足、人件費高騰は、特にアルバイトやパートの依存度が高い外食チェーンで影響が顕著だ。日本マクドナルドも24時間店舗を約2割削減し、営業終了時間を前倒しする動きも相次ぐ。

 すき家の深夜営業中止も、直接的にはこうした人手不足の余波と位置付けられるが、現場の過重労働などを前提にしないと成り立たない24時間営業の実態にこそ根本の課題があったことを忘れてはならない。

 24時間営業の是非では、2008年にコンビニをめぐって論議が活発になったことがある。

 当時は主に地球温暖化問題を背景に省エネ、二酸化炭素(CO2)削減の観点からコンビニの在り方が問われ、京都市や埼玉県が条例で深夜営業規制を検討する事態になった。

 規制によるCO2削減効果が限定的とされ、市民の賛意が広がらなかったため規制は実現しなかった。その際にコンビニ側が強調したのは「24時間営業は市民生活を支える社会インフラ(基盤)として重要な役割を果たしている」という主張だった。

 実はすき家も同じ考え方を経営理念の基幹に据えてきた。「安全でおいしい食をとぎれることなく提供することで地域社会を支える社会インフラ」という気概は崇高だが、無理や行き過ぎがあったことになる。

 外食チェーン以上に身近なインフラとして定着したコンビニにおいても、年中無休・24時間営業の維持に過労感などを訴える契約店があると聞く。

 利益追求やサービス競争は否定するものではないが、「市民のため」「消費者のため」と無理が重ねられているとしたら、私たちにも自省が迫られる。

 24時間営業は誰のために、どの程度必要なのか。人手不足問題で課題が露呈した今は、消費者も経営側もじっくりと見つめ直すいい機会だろう。

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