愛媛新聞 2014.10.2
安倍政権は「女性の活躍」を、「地方創生」とともに今臨時国会の2本柱に掲げた。
主たる目的は少子高齢化で減少する「労働力の確保」。2020年に指導的地位に占める女性の割合を30%にする目標を掲げ、企業に女性の積極登用を要請する。待機児童などの対策も進め、今国会に「女性の活躍推進法案」を提出する方針という。
安倍晋三首相は、先月の内閣改造で女性活躍担当相を新設、女性閣僚5人を起用した「実績」もある。トップの決意は重要で、総論としては歓迎したい。ただその方向性や具体性に不安と疑問が残り、手放しでは喜びづらい。
もともと「女性の活用」と称していた首相は、育児休業期間の3年への延長など、当の女性も企業も望まない施策を打ち出す一方、雇用規制を緩めて、企業に都合のよい働かせ方を拡大してきた。女性の労働参加を阻む「長時間労働」の改善など、男女ともに働きやすい労働環境の整備には、積極的とは言い難い。
また「50年後に1億人」との人口目標を設定、結婚や出産支援に力を入れるが、現に働く子育て世代への支援は乏しいまま。女性の6割が非正規雇用で、賃金は男性の7割程度、ひとり親世帯の過半数が貧困―という厳しい格差の中、どんな働き方でも暮らしを支えられる社会に変えなければ、女性の社会進出も少子化の阻止も進むはずがない。
問題を抱え、変わるべきは「女性」ではなく「男性」であり、硬直化した「男性仕様社会」。政治や企業の意思決定の場に女性を増やし、多様な人材を生かせなくては企業も社会も持続不可能。その危機感を持たねばならない。
しかし、企業の腰は重い。たちまち「推進法案」も、女性登用などの数値目標の設定義務化は見送られた。いくらスローガンを掲げても強制力なしでは、実現は遠い。
男女雇用機会均等法の施行は1986年。だが、国の分科会では「均等法も十分理解できていない事業者もある」との反対意見が公然と出たという。30年近くたって、まだ法の理解も女性社員の育成もできていない企業や経営者の能力こそ、問題だろう。
数値目標は、実効性の担保に不可欠。一定割合の女性の登用を義務づける「クオータ制」導入やペナルティーも含め、検討すべき時機である。
世界の「男女平等ランキング」(ジェンダー・ギャップ指数)は、日本は昨年105位。多くの女性はいまだ、妊娠・出産を理由にした不利益な扱いや、やまない差別、セクハラなど、「活躍」どころか「就労継続」さえ困難な現状にあることを忘れてはならない。男女不平等大国の汚名が返上できるか、政権の本気度が問われている。