http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-07-09/2015070901_05_1.html
しんぶん赤旗 2015年7月9日
労働者をそれ以下の賃金では働かせてはいけないと法律で決まっている最低賃金を今年いくらにするかの検討が、厚生労働省の最低賃金審査会(最賃審)で始まっています。月末をメドに地域ごとの「目安」を決定します。現在の最低賃金は全国平均して時給780円で、1日8時間で月22日間働いても13万7280円にしかならない低賃金です。異常な長時間労働や「働く貧困層」といわれるワーキングプアを解消するためにも、最低賃金を大幅に引き上げ、人間らしく暮らしていける賃金を実現することが不可欠です。
下がり続ける実質賃金
厚労省が全国の労働者の賃金や労働時間を調査している毎月勤労統計調査で、物価上昇を差し引いた実質賃金が4月の速報値では約2年ぶりに前年同月比でプラスと発表されたのに、その後の確報値では一転マイナスに修正され、6月末発表された5月の速報値でも0・1%の減少とマイナスを続けたことが話題になりました。
実質賃金の落ち込みは、なんと25カ月連続です。4月の速報値がプラスだったのに確報値でマイナスになったのは、パートタイムなど非正規の労働者の賃金が低かったためです。春闘などでの賃金の引き上げが消費者物価の上昇や消費税の増税に追いつかず、労働者の生活悪化が進んでいることを浮き彫りにしています。
厚労省が最近発表した「国民生活基礎調査」でも、生活が「苦しい」という人が62・4%と過去最高になったことが明らかになりました。「アベノミクス」(安倍晋三政権の経済政策)のもとで大企業はもうけを増やし、大資産家は株高などでうるおっても、多くの国民は生活悪化で苦しんでいます。最低賃金を引き上げることは、労働者全体の賃金を底上げし、暮らしを立て直すうえで政府がやらなければならない最優先課題です。
最低賃金法は、「賃金の低廉な労働者」に「最低額」を保障し、労働者の生活の安定や労働力の質的向上などを図るとともに、「国民経済の健全な発展に寄与する」ことをうたっています。最低賃金の基準は労働者の「生計費」などを考慮して決めるとしています。実質賃金が長期にわたって減り続け、労働者の生活悪化が進んでいる現状を打開するには、最低賃金の大幅引き上げが不可欠です。
安倍政権は、近年の最低賃金引き上げで、全国的に生活保護基準より最低賃金が上回ったと宣伝しています。しかし、最低賃金の算定は残業込みの平均実労働時間を長めに計算しているなど問題が指摘されています。生活保護基準が年々引き下げられていることからも、生活実態を無視した宣伝です。
全国1000円以上に
重大なのは、最低賃金の「目安」には都道府県ごとにAからDのランク付けがされており、実際の最低賃金額は各都道府県で決めるため、東京など5県が時給800円台でも、最低の沖縄の677円など600円台が17県もあり、地域格差が深刻なことです。おなじAでも東京が888円で隣の千葉が798円というのは異常です。
全国一律で1000円以上にというのは、当然過ぎる要求です。地方での賃金引き上げは地域経済の是正にもなります。地域格差をなくし最低賃金を抜本改正するため、運動を強めることが急務です。