(W) 韓国では、今年(2019年)に入って間もなく、2人の医師が過労死しました。医師の過労死が続いたことに韓国社会は大きな衝撃を受けています。教育に熱心な社会で、医師は人気が高い職業です。亡くなった一人は若い研修医で大学病院で当直勤務などの過酷な勤務の途中に病院内で倒れていました。もう一人は病院の院長を務める著名な医師です。旧正月で人手が少ない中、自ら業務を引き受けて勤務を続けていた病院の院長室で亡くなっていました。日本とも酷似した韓国の医療の世界。医師に大きな負担をかける状況は同じです。そうした中、政府が進める「弾力勤労制」は、医師の勤務を一層悪化させるものとして、2019年4月1日、215名の医師が専門を越えて実名で反対声明を出しています。過労死OUT対策委員会の記者会見の資料として添付されていたものを訳しました。(訳文責・脇田滋)
過労死助長する弾力的勤労時間制期間拡大に
反対する医師215人共同声明
発信 : 韓国労働安全保健研究所
受信 : 諸報道機関社会部
担当 : チェミン(職業環境医学専門医)
1. 連帯のあいさつをします。
2. 4月第一週中に国会環境労働委員会で弾力勤労制単位期間を拡大する勤労基準法改正案を処理する可能性が高いといいます。これに対して、3月30日からたった3日間で215人の医者たちが「過労死を助長する弾力的勤労時間制期間拡大に反対」するという共同声明を発表します。 一線で労働者の健康を守るのに共同しようと思う145人の職業環境医学と医師だけでなく、多様な地域、多様な医療機関で働く様々な専攻科目の医者たちが同意しました。
3. 声明には、職場の健康を守る職業環境医学科医師会、人道主義実践医師協議会、韓国社会的医療機関連合会、労働健康連帯、韓国労働安全保健研究所など多様な団体に属している医師だけでなく、知らせを聞いて自発的に参加した医者たちも参加しました。
4. 声明に参加した医者たちはすでに数多くの科学的、医学的研究と臨床経験で一日労働時間が長くなって、労働時間が不規則になれば労働者たちの身体的、精神的、社会的健康が蝕むという事実がよく明らかになっているにも関わらず、弾力的勤労時間制を拡大しようとする政府と財界、国会の動きに怒っています。 週52時間労働時間上限を適用するには弾力的勤労時間制拡大が避けられないという論理に同意できません。 労働間11時間の連続休息時間導入だけでゴムひも労働時間から労働者の健康を守ることはできません。
5. その上、不規則な長時間労働は医療界でも重要な問題です。 今年の初め二人の医師が続けて過労死して医師社会にも大きい衝撃を与えました。 現在の保健医療業は勤労基準法の延長勤労制限規定の適用を受けない勤労基準法59条の特例業種に該当します。 私たちの労働時間は「柔軟と弾力」が必要なのではなく、さらに厳格な制限が必要です。
6. 国会立法調査処ですら、「勤労者代表や勤労者が事前に(労働時間を)予測することが難しく。特定日に勤労が集中する場合、健康上障害が発生する恐れがあるという批判がある」と分析したと報じられています。 国民の健康を守る医師として、労働者、国民を過労死・過労自殺に追い立てる弾力的勤労時間制の期間拡大に反対します。 国会は直ちに弾力的勤労時間制の期間拡大の議論を中断し、自ら話す「労働時間短縮という時代的課題」をどのように達成するのか慎重に悩んでください。
過労死助長する弾力的勤労時間制期間拡大に
反対する医師声明
週当たり52時間労働時間上限制を明確にして、「実勤労時間短縮の時代的課題を解決」するという勤労基準法改正案が施行されてもう9ヶ月だ。 法定労働時間40時間遵守には非常に不足したうえに、今のところは300人以上事業場のうちでも一部にだけ該当して、実労働時間短縮の効果を国民がまともに感じることも難しい短い期間だ。
ところで、政界と財界では週当たり52時間上限が導入されれば、弾力勤労制期間拡大が必ず必要なように糊塗している。 現行弾力勤労制でも最長6週まで続けて64時間勤務が可能だ。 ところで3月8日韓貞愛議員が代表発議した勤労基準法一部改正案によれば、単位期間が6ヶ月以内である弾力的勤労時間制が新しくできる。 このようになれば、週当たり64時間ずつ3ヶ月(12週)まで続けて働くことが可能になる。 4週間、週当たり64時間あるいは12週間平均60時間以上働いた後に発生した脳心血管疾患を産災で承認しているが、政府が出て過労死発生条件を合法的なことにするわけである。
労働時間が健康に及ぼす影響を1ヶ月、さらに6ヶ月を基準として問題にするのは話にならない説である。 多くの生体時計が一日の周期をもっていて健康に働くには、毎日適切に仕事をして適切に睡眠と休息を取らなければならない。 労働者は働きさえする機械や装備ではないので、家族や友達関係を営むためにも生活が一日の周期で適切に構成されなければならない。そうでなければ、労働者の健康に悪影響を及ぼす。
それで週当たり労働時間と別に、作業が始まって9時間以上から事故率が増加し、12時間以上働けば、事故の危険が2倍に高まる。 12時間勤めれば睡眠の質が悪くなって睡眠時間が短くなる。 労働時間が週当たり52時間だけ超えても脳心血管疾患発生が高まる。 勤労環境実態調査で週当たり勤務時間と関係なく、10時間以上労働が週2回以上続けば、憂鬱、または、不安障害が2.7倍増加することが明らかになった。 このすべての危険を労働者、とくに自身の権利を主張しにくい労働者たちに転嫁する方法を作るということだ。
この勤労基準法改正案は、‘3ヶ月を超過する「弾力的勤労時間制」の場合には勤労間に11時間の連続休息時間を付与し「労働者の健康保護」を企てるという。 しかし、11時間休息は、夜11時まで働いて退勤した労働者が、次の日午前10時に出勤することができるように保障する措置だけということである。 最長3ヶ月まで続けて週当たり64時間ずつ働くことから発生しうる危険を全く減らすことができない条項を作っておいて、健康保護策であると誇張している。
長時間労働と過労、過労死は韓国社会全体の問題でもあるが、医療界でも深刻な課題である。 2019年新年早々に、応急医学科専門医と小児科専攻医〔日本の研修医にあたる〕が過労で続けて死亡した。 保健医療業は、労働時間制限がない特例業種に該当し、医師をはじめとする保健医療労働者たちは、労働時間と関連した制度的保護をほとんど受けることができなくなっている。 国会は、弾力勤労制の期間拡大で労働時間運営の「柔軟性」を探す前に、延長勤労制限の特例業種、勤労基準法の勤労時間適用除外業種など労働時間規制の死角地帯をどのように減らし、全社会に蔓延した長時間労働と過労をどのようにさらに厳格に規制、管理、監督するべきかを悩まなければならない。
過労死を助長する弾力的勤労時間制の期間拡大に反対する私たち医者は、次の通り宣言する。
1. 国会は、過労死を助長する弾力勤労制の期間拡大議論を中断せよ
2. 国会は、無制限長時間労働を誘発する勤労基準法59条の労働時間特例制度を廃止せよ
<家庭医学科>カン・テゴン、キム・ナムスン、キム・ミジョン、キム・シネ、キム・ジョンボム、キム・ジョンヒ、パク・ジヨン、ウ・ソッキュン、イ・ムニ、チョ・ケソン、チョ・ヘヨン、チェ・ヤンチェ・ユンジョン <内科>パク・イネ、ペク・ジェジュン、ソン・グァウク、ソン・ホンソク、アン・ジョンホ、ユ・ヨンジン、ユン・ヒョンベ、イ・ポラ、チョン・ソンファ、チョンジョンタク、チョン・ジョンヒョク <産婦人科>コ・ギョンシム、ユン・ジョンウォン、イ・ヘヨン<小児青少年科>キム・ジョンウン、チェ・キョンビン <神経科>パク・ビョンス、ソン・ヒョンソク <神経外科>キム・ギョンイル <予防医学科>カン・ヨンホ、キム・ミョンヒ、キム・セロム、キム・ヨンス、キム・ジンファン、キム・チャンフン、パク・ユギョン、サゴン・ピリョン、ソ・ジュヨン、イム・ジュン、チョン・ベックン、チョ・サングン、チェ・ヨンチョル、ファン・スンシク <応急医学科>イ・ソウン、ハム・スンホ <一般医>キム・ドングン、キム・ソンウク、キム・ジンヒョン、キム・テフン、パン・ムソン、ソ・ヒソン、ヤン・ムニョン、ヤン・ヨンジュン、イ・ミラ、イ・スジン、イ・ウンジュ、イ・ヒョンソク、イ・ホンギ、イム・ジェウ、チョン・ジンハン、ホン・ジョンウォン <リハビリ医学科>パクユリョン、ヤン・ドンソク、ジョン・ヒ <精神健康医学科>チョン・ヨジン、チェ・スルギ、ハン・ヒジョン <職業環境医学科>カン・ヒテ、コン・ウジョンオク、クァク・ギョンミン、クァク・ウソク、ク・ボナク、クォン・ヨンジュン、クォン・ジョンホ、キム・キュヨン、キム・ナミ、キム・デシク、キム・テホ、キム・ドヒョン、キム・ミョンボ、キム・ポンヒョン、キム・ソンア、キム・ソンウ、キム・セヨン、キム・セウン、キム・スンファン、キム・ヨンギ、キム・イェチ、キム・ウンギョン、キム・ジョンミン、キム・ジョンス、キム・ジョンウォン、キム・ジョンウン、キム・ジホン、キム・チョルジュ、キム・ヒョンジュ、キム・ヒョンド、キム・ヒョンニョル、キム・ヒジン、ト・サンユン、リュウジリュ・ヒョンチョル、ムン・ジェヒョク、ムン・ヒョンジェ、ミン・ジヒ、パク・ソンギュ、パク・ソンジン、パク・スンクォン、パク・ユンスク、パク・ジョンレ、パク・ジョンフン、パク・テジュン、パン・イェウォン、ペ・ギュジョン、ペク・ラクチュン、ベク・チョリン、ソン・マンガ、ソン・ジヨン、ソン・ヨンボク、ソン・ユジュンン、ソン・ユンヒ、ソン・ジェソク、ソン・ジフン、シン・ギョンソク、シン・ドンヒ、シン・ヨンシク、アン・セジン、アン・ヨンスン、アン・ジュンホ、アン・ジンホン、アン・ヒョンスク、ヤン・ソンヒ、ヤン・ジョンオク、オム・カンヒョン、オ・ジェイル、オ・ヒョンホ、ワン・ジョンホ、ウォン・ジョンウク、ユ・ドンヒョン、ユ・サンゴン、ユク・ジフ、ユン・ヨギョン、ユン・ジョンワン、ユン・ジンハ、イ・ゴウン、イ・ナムン、イ・ドンウク、イ・ミョンジュン、イ・ムシク、イ・ミンギ、イ・ポムジュン、イ・サンユン1、イ・サンユン2、イ・ソンウン、イ・セミ、イ・セヨン、イ・ヨンイル、イ・ヨンホ、イ・ウォンチョル、イ・ウンス、イ・ウイチョル、イ・イリョン、イ・イルホ、イ・ジェグァン、イ・ジョンソク、イ・ジョンイン、イ・ジュヨン、イ・ジウォン、イ・ジンウ、イ・ヒョンソク、イ・ヘウン、イ・ファピョン、イム・ミョンソプ、イム・ジョンウク、イム・ジョンハン、チャン・ポヨン、チャン・ウォンジュン、チャン・ウンチョル、チョン・キョンソク、チョン・セミ、チョン・インソン、チョン・ジユン、チョン・チェギョンヒ、チョン・ピルギュン、チョン・ハンスル、チョン・ホンジョン、チョ・ソンシク、チョ・ユンシク、チョ・インジョン、チョ・ヒョンア、チュ・ヨンス、チュ・ヒョンウ、チェ・ホンジェ、チョン・ホソン、チェ・ミン、チェ・ソンヘン、チェ・ソンニョル、チェ・ソラ、チェ・スン、チェ・チャンギ、チェ・テソン、チェ・ヒョンギョン、チェ・ヘラン、チュ・サンヒョ、ハ・ナヨンハ・リュン、ハ・ウンヒ、ホ・ヒョンテク、ホン・ソクウ、ホン・スジン、ホン・ジョンヨン<合計215人>