川人博弁護士 「労働行政の改善が急務である」(7/21)

 新ストップ! 過労死 2019年7月21日 発行 全国ニュース 第8号


【巻頭挨拶】ー労働行政の改善が急務であるー
        過労死防止等対策推進全国センター代表幹事
        過労死弁護団全国連絡会議幹事長 川人 博
 
 6月に厚労省より発表された平成30 年度過労性疾患(脳・心臓疾患、精神疾患・自殺)の労災認定状況報告によれば、平成30年度は過去5年間のなかで、労災認定数が最も少なく、かつ、労災認定率も最も少なくなっています。他方で、新規の労災申請数は、精神疾患を中心に増加しています。この数字は何を意味しているのでしょうか。私の代理人としての実務体験から言っても、労災認定数や認定率が低くなっていることには全く納得ができません。申請案件の業務起因性が弱まっているのではなく、厚労省・労働局・労基署が業務上認定を少なく抑えようとしていると考えざるを得ません。
 現在の労働行政のなかで次のような重要な問題点が浮き彫りになっています。
 1 実労働時間を過少に認定する傾向が強い。特に、出張業務・自宅業務などの社屋外労働において社会常識から著しく乖離した認定が行われている。
 2 深夜勤務・不規則勤務などの過重性を評価せず、これらに従事する労働者について、日中労働者と同様の基準で労働時間の過重性を判断している。
 3 複数の職場で働く労働者の労働時間規制を放置し、かつ、過労性疾病や過労死が発生してもその過重性を個々の職場ごとに切り離して判断している。
 4 精神疾患罹患者に業務上の過重な心理的な負荷がかかっても、通常の健康な労働者であれば労災として判断すべき負荷があっても、労災として認定しない。
 5 高齢者、様々な障害を有する労働者については、通常の労働者と同じ基準(労働時間規制等)でなく、より労働時間の短縮等を配慮すべきにもかかわらず、そのような監督行政が行れず、また、労災が発生しても通常の労働者と同じ基準で判断している。
 

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