[議論]上野千鶴子「男性稼ぎ主モデルからの脱却急げ」(8/28)

[議論]上野千鶴子「男性稼ぎ主モデルからの脱却急げ」
https://business.nikkei.com/atcl/forum/19/00024/082300011/?n_cid=nbponb_twbn
大竹 剛 日経ビジネス副編集長 2019年8月28日

 読者の皆さんと一緒に考えるシリーズ企画「目覚めるニッポン 再成長へ、この一手」。今回のテーマはジェンダーについて。提言してくださったのは上野千鶴子氏。上野氏の歯に衣(きぬ)着せぬ発言は、今年の東京大学入学式の祝辞でも大変な話題となりました。上野氏は、日本の再成長に向けた一手は、「男性稼ぎ主モデルからの脱却」であると主張します。

皆さんのご意見をお寄せください。

認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長の上野千鶴子氏。東京大学入学式の祝辞が大きな話題を呼んだ(写真:的野弘路)

上野さんは、日本企業の「女性差別」は依然としてなくなっていないと主張し続けています。現状をどのように見ていますか。

上野千鶴子氏(認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク 理事長、以下、上野氏):はっきりしています。女性の雇用という観点で見ると、明らかに「日本型雇用は岩盤規制」です。

 なぜ、日本企業の中で女性が活躍できないかというと、日本型雇用は組織的・構造的に女性を排除する効果があるからです。これを「間接差別」と言います。私たちは、性差別を次のように定義しています。

 あるシステムが、男性もしくは女性のいずれかの集団に、著しく有利もしくは不利に働くとき、それを性差別と言います。それに基づけば、「女性を排除する」といった内容が明示的に就業規則などに書かれているわけではないが、また個々の事例の因果関係を実証できなくても、統計的・疫学的に見て、日本型雇用に女性を差別する効果があると言えます。

 日本型雇用は基本的に「男性稼ぎ主モデル」です。夫である男性が一家の大黒柱で、妻である女性が家事と育児を一手に引き受けることを前提にして成り立っていて、それをずっと維持しています。これが今日に至るまで変わっていません。

 そんな企業社会に、男性と同じ条件で入って来いと女性に言っても、100%無理です。「女性活躍」と叫ばれていますし、それを推進するための法律もできました。けれども、男女雇用機会均等法にも女性活躍推進法にも、実効性のある罰則規定はありません。いずれも、掛け声だけの法律です。

ジェンダー研究で私たちの仲間の大沢真理さんは、均等法を「テーラーメイド(紳士服仕立て)」の法律と呼びました。卓抜な表現ですね。身に合わない「紳士服仕立て」の服に合わせる女性しか、そこに参入できないという意味です。

高度成長期の「男性稼ぎ主モデル」を惰性のように続けている
法律もできたけれど、日本の企業社会は根本的に、何も変わっていないというわけですか。

上野氏:そうです。この男性稼ぎ主モデルを、日本企業は半世紀以上も続けてきています。男性稼ぎ主モデルは高度成長期の成功モデルで、これを惰性のように今も維持しているわけです。

 最近、多くの経営者が「ダイバーシティ(多様性)が大切」と言い始めています。しかし、男性稼ぎ主モデルを前提とした日本型雇用がダイバーシティを阻む「がん」であることは、多くの研究者によってほぼ答えが一致しています。

 しかも、ダイバーシティを推進すると企業はもうかる、ということも結論が出ています。経済学者の川口章さんは著書『ジェンダー経済格差』(勁草書房)で差別型企業と平等型企業を比較し、平等型企業の方が差別型企業よりも売上高経常利益率が高いことを示しました。

 経営者は、経済合理性の高い方へビジネスモデルを変革するはずですが、日本企業ではそうならない。川口さんもそのような問いを立てて検証しましたが、答えは「ノー」でした。なぜか。

なぜ、日本企業は変わらないのでしょうか。

上野氏:それは、どんなシステムでも均衡していれば、それを変革しようという動機はシステムの内部からは生まれにくいからです。日本企業は女性に対して差別的でも、システムとしては均衡しています。

 例えば、均衡しているシステムの一角が年功序列で、それを支えている新卒一括採用を日本企業はやめられません。最近になって経団連が新卒一括採用に偏った慣行の見直しを決めましたが、均衡しているシステムの一角を崩すと、人材の査定評価の在り方など全てを連動して変えなければなりません。それだけの覚悟があるのか疑問です。だから私はいつも、ダイバーシティを強化するという企業に対して、「新卒一括採用をやめない限り、本気とは思えない」と言っているのです。

女性にとっての直接的な壁は、管理職の長時間労働
男性稼ぎ主モデルを受け入れられない人を構造的に排除するシステム自体が強固だから、内側から変革は起きにくいということですか。

上野氏:そうです。まるで“ホモソーシャル・コミュニティ(男同士の強固な結びつきで成り立っている社会)”です。その典型が軍隊システムです。女性に対して差別的でも均衡しているから、内部改革の動機が生まれないのです。

 社会学者の山口一男さんは『働き方の男女不平等 理論と実証分析』(日本経済新聞出版社)の中で、「劣等均衡」と呼んでいますが、劣等でも均衡は均衡、容易に変えられないのです。山口さんは統計データを基にしてその答えを導き出しています。女性が活躍できないことで、結果として巨大な外部不経済を生み出していると指摘しています。

 女性の活躍を阻む、目に見える直接的な壁は、管理職の長時間労働です。管理職は誰よりも長時間労働をすることを強いられていますが、その長時間労働に、家庭を持つ女性はとてもついていけません。男性の長時間労働は、家庭を顧みないことで成り立っていますから。

 2003年(平成15年)に、内閣府の男女共同参画推進本部が「202030」という方針を決定しました。2020年までに指導的地位に占める女性の割合を少なくとも30%にすることを目指すものですが、最初、このスローガンを聞いたとき、なぜ「202050」ではないのか、と思いました。

「女性比率3割」に達する前にゲートコントロール?
なぜ、男女半々ではないのかと。

上野氏:50%を目指すのは当たり前でしょう。ただ、30%という数字にも意味があります。経営学者のロザベス・モス・カンターさんが「黄金の3割」と言っているのですが、組織論的には、組織内のマイノリティの比率が3割を超えると、マイノリティがマイノリティではなくなり、組織の文化が変わっていきます。

 その意味で私が今、関心を持って調べているのは、採用選考における性差別です。多くの組織で女性比率は高まっていますが、それが3割近くになると頭打ちになるという現象が見られるようです。つまり、採用のところで性差別をする「ゲートコントロール」がなされているのではないかという懸念があります。

 放っておけば女性比率がどんどん高まり3割を超えてしまう。3割を超えると組織文化がいや応なく変容してしまう。それをホモソーシャルな男性集団は恐れて、意識的にか無意識的にかはともかく、3割を超えないようにコントロールしているのではないかと。

 例えば、医師国家試験の女性合格率は3割台に達した後、ずっと横ばいです。なぜ、横ばいのまま増えないのか。その答えが、東京医科大学の入試不正で明らかになりました。つまり、女性や浪人生などを不利に扱うことで、ゲートコントロールをしていたのです。東京医科大だけではなく、文部科学省は全国81の大学を調査し、9校が不適切な運用をし、1校が「その可能性が高い」という最終報告をしました。ゲートコントロールが幅広く行われていたことが証明されました。

 マスコミも含め、民間企業もこのようなゲートコントロールをしていないでしょうか。採用した人の成績を個別に公表してもらい検証するのは難しいでしょう。しかし、少なくとも統計的差別というのは、データを見て有意な差があれば疫学的に証明できます。これを「ジェンダー統計」というのですが、ぜひ企業の皆さんには、応募者における男女の比率と採用者における比率を公表してもらいたいものです。

企業が自主的に変われないとしたら、「202030」を「202050」にするなど、政府が目標を厳しく設定するしかないのでしょうか。

上野氏:数値目標はただの掛け声ですから、目標を引き上げたところで企業は変わりません。やり方は2つあります。

 1つは、やはり規制です。すごく簡単なことは、男女ともに長時間労働をやめ、定時に帰るようにすることです。医療の世界で言えば、看護師は3交代制が定着しているから、女性でも男性と同じように働ける。医者だって3交代制にすればいいんです。カルテを共有することができるのだから、絶対に主治医が診なければいけないという時代でもないでしょう。

 企業の残業だってその気になれば劇的に減らせるはずです。残業手当の割り増しは現在、夜10時以降が5割増しですが、17時半などの定時退社の時間を超えたら、即座に5割増しにするように規制すればいいのです。

差別型の日本企業は3つのグローバル市場で敗北する
企業はそんな残業手当は払いたくないでしょうね。

上野氏:払いたくないでしょう。だから、そんな規制を導入したら、長時間労働なんてあっさりとなくなりますよ。

 ただ、均等法以来30年間、いわゆる「労働のビッグバン」で規制緩和がずっと至上命令でした。規制緩和が足りないから、生産性が上がらない、といった理屈が背景にあります。しかし、本当でしょうか。ずっと規制緩和を続けてきたツケを今、労働者が払わされているのではないでしょうか。

 派遣労働の問題もそうです。規制緩和の結果、派遣など非正規労働者と正規労働者の賃金格差は、“身分格差”と言っていいほど広がっています。政府は、「同一労働同一賃金」を実現しようと掛け声をかけていますが、政府のシミュレーションによれば、同一労働同一賃金にしても、最低賃金で働く非正規労働者の賃金はたいして上昇しません。非正規労働者の平均年収は200万円以下、下手な同一労働同一賃金にするより、最低賃金を1500円にすれば標準労働時間年間約20000時間で300万円になります。これなら食べていけます。

 もう1つは、グローバル競争にもっとさらされることです。自己改革をしない差別型組織が多い日本企業と、平等型組織のグローバル企業が競争すれば、その勝負は明らかです。差別型の企業は沈没して、平等型の外資や新興企業にとって代わられていくことになります。

 差別型企業と平等型企業は、3つの市場で競争することになります。

 1つ目の市場は、商品市場です。商品の市場にダイバーシティがあることは、皆さん知っています。多様なローカル市場の集積がグローバル市場ですから、市場のダイバーシティに応じた組織内のダイバーシティがある方が、多様なニーズに対応できます。

 2つ目の市場は、労働市場です。働きやすい職場は、より有能な人材を引きつけます。当然、有能な女性もその中に含まれます。

 3つ目の市場は、金融市場です。先ほど、平等型企業は差別型企業よりも利益率が高くなる傾向があると話しましたが、投資家は収益性の高い企業を選ぶでしょう。差別型企業と平等型企業の違いは、資金調達の在り方の違いにもあります。前者は銀行志向、後者は投資家志向という特徴があることも、川口さんの研究から分かっています。

 この衰退企業と勃興企業との交代が国内市場で起きればアベノミクスにいう「経済の好循環」が起きるはずですが、市場はそんなに甘くありません。グローバル市場は国境で閉じていないからです。日本企業は現状のままでは、3つの市場のいずれでも勝ち目はありません。この全てで負けた企業は沈没するでしょう。じわじわと沈没していって、気が付いたらある日、二度と浮上できなくなるかもしれません。日本という「巨艦」が沈没してしまう危機に直面しているのです。もう手遅れかもしれません。

70年代ごろまで欧米も「男性稼ぎ主モデル」だった
こうした3つの市場での競争は、グローバル化の中で既に起きていました。それなのになぜ、日本企業は変われなかったのでしょうか。

上野氏:その理由は、国際比較をするとよく分かります。1970年代ごろまでは、欧州諸国も米国も保守的な社会で、男性稼ぎ主モデルを維持していました。しかし、グローバル化が進む中で、そのモデルを変えてきたのです。ネオリベラリズム(ネオリベ=新自由主義)改革はグローバリゼーションに対する政治的な対応のひとつです。そのときに労働力としての女性の動員が不可欠だったのです。

 女性を動員しようと思ったら、女性を家庭に縛り付けている負担、つまり女性の「ケア責任」を取り除き、どこかにアウトソーシングしなければなりません。そのための選択肢としては、「市場化オプション」「公共化オプション」「平等化オプション」の3つがあります。平等化オプションというのは、男性も女性と同じように家庭のケア責任を分かち合うという意味ですが、理想主義的でそんなことをやる男性はほぼいませんから、現実味はありません。実際には市場化か公共化、いずれかの選択肢になります。

女性の家庭からの解放には3つの選択肢がある
男性には期待できませんか。

上野氏:機会費用の男女差がある限り、期待できません。「イクメン」とか言っていますが、ごく一部の自由業など限られた職業の男性でしょう。それに査定評価が下がるペナルティもあります。だから、事実上、選択肢は最初の2つしかありません。

 公共化を選択したのが、例えば北欧モデルです。公共化するには国民負担率を上げなければなりませんから、北欧は消費税率も所得税率も非常に高くなりました。一方、市場化を選択したのが、米国や英国のアングロサクソンモデルです。市場化は、安価に利用可能な労働力がないと成り立ちませんから、移民を積極的に受け入れる社会が前提となります。

 この両方の条件を欠いたのが日本です。その結果は合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子供の数の平均)の低下にも表れています。日本では人口を維持するには2.07の出生率が必要ですが、1.5未満まで低下しています。

先進国の合計特殊出生率の推移

(出所:経済協力開発機構=OECD)
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他の先進国と比べると、ドイツの出生率も長らく低迷しています。

上野氏:ドイツは中途半端な育児支援策をやったことが原因です。専業主婦支援に相当な政策投資をしたにもかかわらず、効果が上がりませんでした。背景には、働いていない女性を支援した方が、たくさん子供が生まれるだろうという考えがありました。

 ドイツの人口政策は色々なことを試みていて、投入する税金額もとても大きかったのですが、検証してみると専業主婦支援策はほとんど効果がない半面、働く母親の育児負担を軽減したほうが効果があることが分かりました。ドイツだけではなく、諸外国では過去30年ほどの政策の効果が検証されているので、参考になります。

 日本でも最近、「待機児童ゼロ」が政策の優先課題として浮上していますが、これまでは歯牙にもかけられなかった政策課題が男性政治家からも重要視されるようになってきました。ここにきてようやくという感じですが、これもしっかりと諸外国の政策を分析して大局的な判断から実施しているというよりは、選挙対策という側面が否めないのは残念です。

バブル景気が全ての改革を遅らせた元凶
何十年も前から、いずれ日本の出生率も下がってきて、人口減少に転じるというのは予測されていました。なぜ、対策が後手に回っているのでしょうか。

上野氏:とてもいい質問ですね。これも研究者の中では答えが出ています。1980年代のバブル景気が、全ての改革を遅らせた元凶であると。

 グローバリゼーションの最初の一撃は1973年のオイルショックでした。その後、日本の中曽根政権は国鉄民営化などのネオリベ改革に乗り出しました。その手本が、英国のサッチャー政権が実施した「保守革命」です。

 当時、日本企業は会社と労働組合がウィン・ウィンの関係を築き、社内の配置転換で雇用を維持するなどして、男性稼ぎ主モデルの既得権益を守りました。そして1980年代、米国や英国が苦しんでいたとき、「ジャパン・アズ・ナンバー・ワン」といわれて、日本型雇用は世界一だと胸を張っていたのです。そして、それを支える日本の家族制度は、世界に冠たる安定性を持っていると考えられていました。男性の「一生就社」と女性の「永久就職(結婚)」がセットだったわけです。

 そのころ、他の先進諸国の女性は大きく変化しました。離婚率が急速に上昇し、婚姻率も低下。婚外子出生率が上昇しました。この3つの人口学的な変化が日本では起きませんでした。先進諸国で唯一の例外といっていいでしょう。

 家族制度が安定しているから、米国などで問題となっていた離婚が増えるような状況は日本では起きないし、北欧のような高齢者問題は起きないといわれていました。しかも、バブルが起きて「日本の国土の値段でアメリカが買える」とまでいわれて有頂天になっていました。

 バカげていますよね。それが全ての改革を遅らせた諸悪の根源だと思います。

日本以外の先進国はグローバリゼーションに苦しめられたおかげで、先ほど指摘された「市場化」や「公共化」といったオプションを使って改革を進めた。一方、日本はその間、家族制度は安定している、と妄信して改革が遅れたということですか。

上野氏:その通りです。日本は過去30年、惰性で経済を運営してきました。政策立案の発想が昔と何も変わっていない。現実は変わっているのに、完全にズレています。

子育て支援制度がもたらす「マミートラック」
企業に話を戻すと、育休や産休など、子育て支援制度を充実させる企業もあります。こうした取り組みをどのように評価していますか。

上野氏:女性たちは、そうした権利を使うようにはなりました。しかし、権利を行使しても、復帰後の処遇、査定評価が育休・産休に入る前よりも低いところになってしまうという話をよく聞きます。そうなってしまっては、もはや権利というより出産ペナルティのようなものです。

 「マミートラック(母親向けコース)」という言葉があります。産休や育休から戻ると、キャリアや仕事の内容が限定されてしまい、「アスピレーションのクーリングダウン(意欲の冷却)」が起きてしまうのです。そんな状況で、子供を産みたい、とは思えないでしょう。

 優秀な女性ほど、そのような会社を辞めていくでしょうね。一昔前は、女性が離職する代表的な理由は「家庭責任」といわれていました。つまり、家事とか育児とか、そういう理由です。しかし、最近はそうではなく、「アスピレーションのクーリングダウン」が増えています。

 ただ一方で、こうした状況に適応してしまう女性もいます。大企業なら雇用は安定しているし給料もいいし、ブランド力も福利厚生もある。だから、「まあ、これでいいか」って。

 私はこうした状況をイソップ童話にちなんで「すっぱいぶどうシンドローム」と呼んでいます。本当はぶどうを手に入れたいのに、「すっぱいから」と言い訳をして諦めてしまうキツネが登場する。管理職になりたいという意欲も失われます。そうなってしまっては、その女性が持っている潜在能力を発揮するチャンスが、一生奪われてしまいます。あの手この手で女性の意欲をそいでいるのは、職場環境なのです。

40代の「男性稼ぎ主モデル」再生産を食い止めよう
こうした状況を変えるには、やはり経営者の意識が変わり、改革の旗を振っていくしかないのでしょうか。

上野氏:現状を変えなければならないと、誰が自覚するかが重要です。先ほどお話した通り、企業は自ら変わろうという動機付けがないと変わりませんから。

 動機付けは、やはりクリティカルなクライシスでしょう。しかし、危機にならないと学ばないのかと思うと、残念でなりません。危機になったときには、ほとんどの場合、手遅れですから。

今の経営者ではなくて、次の世代に期待するしかないのでしょうか。

上野氏:それを待っていたら、遅すぎます。それに、その人たちがトップに立つ頃には、その人自身がこれまでの組織の色に染まってしまっているかもしれません。

 大企業のような巨大な組織を変えることはものすごく大変ですから、志のある若い人たちは、さっさと出て行って外資や新興企業に移ってしまうかもしれませんね。沈みかけた泥船から聡(さと)い小動物たちが先に逃げ出すようにね。

 ただし、トップの姿勢が変われば、組織は変わります。そこには希望を失いたくないですね。だから、経営者の集まりに呼ばれれば出て行って、話をしています。経営者は外の世界をよく知っていますから、変化を感じています。残念なのは、中間管理職に話す機会がないことです。経営者の集まりや、女性社員向けの研修プログラムには呼ばれますが、40代くらいの中間管理職の集まりには呼ばれません。ここが組織のがんだというのに。

 40代というと、大竹さんくらいの世代でしょう。そこまでオッサンじゃない世代です。しかし、その世代では既に、男性稼ぎ主モデルの価値観が再生産されています。だから、トップはもちろんですが、中間管理職の男性たちが今すぐ意識を変えないと、日本企業はますます沈没していくでしょう。

 上野さんは、一貫して男性稼ぎ主モデルに立脚した日本型雇用システムを批判します。高度成長を支えた役割は終わっているのに、惰性のように維持してきており、このままでは日本企業はますます沈没していくと警鐘を鳴らします。

 そこで、皆さんにもお聞きします。

 「男性稼ぎ主モデル」から脱却するには、何をすべきでしょうか

 上野さんの主張への感想とともに、皆さんの考えをお寄せください。

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