北海道新聞社説 秘密保護法案 強行採決は許されない

北海道新聞 2013/12/06

なぜ、これほどあからさまに民意を無視できるのか。どうして、かたくななまでに国民の懸念に耳を傾けようとしないのか。

 政府・与党がきのう、参院特別委員会で特定秘密保護法案を強行採決した。衆院に続く暴挙である。国会会期末のきょう、参院本会議でも採決を強行し、成立させる方針だ。

 政府が指定した機密の漏えいや取得に厳罰を科し、国民の「知る権利」を著しく侵害する極めて問題の多い法案である。それを参院に送られてからわずか1週間ほどで強行採決するなど断じて容認できない。

 国民の不安の声は日増しに強まり、国際的な批判も高まっている。

 これ以上、批判が強まるのを避けるため採決を急ぐのなら国民への背信行為だ。政府・与党は欠陥法案であることを認め、撤回すべきだ。

 秘密指定の妥当性をチェックする機関として、菅義偉官房長官はきのう、安倍晋三首相が内閣官房に設置すると表明した「情報保全監視委員会」とは別に、「情報保全監察室」を内閣府に設置する考えを示した。

 「第三者」機関にこだわる日本維新の会に配慮したものだが、政府内に置かれる点は保全監視委と同じで、客観的な判断は期待できない。

 そもそもこうした機関の設置は法案の本則に明記すべきだ。政令で定めるのなら、時の政権によって簡単に廃止できてしまう。

 森雅子担当相は2日の審議で、一般市民が特定秘密と知らずに情報を知ろうとしても処罰されないとしていたそれまでの答弁を翻し、「特定秘密を取得するかもしれない」との認識があれば処罰されるとした。

 森氏はそれ以外にも、報道機関への家宅捜索や、公務員と報道関係者の接触に関する規範新設などをめぐって発言撤回や修正を繰り返した。これらはいまだにはっきりしない。

 法案の修正合意をしている維新やみんなの党さえ審議が不十分だとして委員会採決を棄権した。

 自民党の石破茂幹事長がテロと同一視した法案反対デモは全国各地に広がっている。国連のピレイ人権高等弁務官は法案への懸念を示した上で、政府と立法府に対し、国内外の懸念に耳を傾けるよう促した。

 法案は憲法が保障する国政調査権を侵害する。本来、国会議員がこぞって反対の先頭に立ってしかるべきものだ。

 秘密保護法が成立すれば、民主主義にとって取り返しのつかないダメージとなる。有権者は個々の議員が法案にどのような対応をするのか注視している。

 国会議員としての見識で法案への対応を考え直すべきではないか。

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