日本医労連・森田進書記長 【談話】地域の実情や現場を無視した病院再編・統合に強く抗議する

【談話】地域の実情や現場を無視した病院再編・統合に強く抗議する

2019年9月27日
日本医療労働組合連合会
書記長_森田進

 厚生労働省は9月26日、再編・統合の必要性があるとして424の公立・公的病院等の名称の公表を強行した。対象は1455の公立・公的病院等で、2017年度の報告データを基に、「診療実績が少ない」「他の医療機関と競合している」といった分析を行い、病床数の削減・変更や診療体制の見直しを求めている。

 しかし今回の厚労省の分析は、「地域医療構想」による病床削減計画の策定が思うようにすすまない中で、ベッド削減先にありきの分析としか見受けら(れ)ない。まず初めに指摘しなければならない点は、度重なる患者負担増などにより、医療を受けたくても受けられない受診抑制の実態が広がっている点を考慮せず、現状の診療実績を根拠としている点である。また、現場から病院までの救急搬送に要する平均時間を12分と説明しながら、その時間よりも長い20分を「近接する医療機関」の定義としていることも妥当性・相当性を欠いている。そして地域の医療や介護を取り巻く実情、医師不足などによる診療実績への影響などもまったく考慮されていない、いわゆる「机上の空論」である。公立・公的病院では、民間病院が受け入れづらい不採算部門の診療科や、地域の医療体制を踏まえたうえで特化した診療科の設置など、特殊性を持った診療を請け負っている施設も多いが、そのような特性を個別に判定することもなく、病床稼働率や手術件数、救急車の受入数などの数値だけを持って分類するのは、現場の実情も考慮しない機械的な分析である。また、直近の単年度の診療実績のみを取り上げた、ピンポイントデータを基に作成された分析であり、医師確保状況によって診療実績は大きな影響を受けるのに、経年的な変化は考慮されていない、極めて乱暴な分析である。そもそも現時点の診療実績に基づいたデータによって病床数を削減するとしたら、いったん再編・統合となれば、その後病床数を増やすことは、施設的なハード面からも困難となり、すべての地域において今後の人口増加や医療需要の変化には対応できなくなることは明らかである。
地方自治体関係者が、過疎化を食い止め、人口減少に歯止めをかけ、人口増加に転じさせるための努力を続けているときに、冷や水を浴びせることになる。「医師の働き方改革の方向性も加味して」検証・対策ともしているが、結局のところ、絶対的な医師不足の現状を固定化させ、医師数に合わせたベッド削減をすすめるものに他ならない。 地域の実情も、人手不足の中で必死に地域医療を支えている医療現場の声もまともに聞ず、一方的な分析に基づく要請は撤回すべきであり、「強制」ではないと言うならば、公立・公的病院の地域医療を守る観点を尊重することを強く求める。いま政府が行うべきことは、国民のいのちと健康を危険にさらす一方的な病床削式ではなく、医師・看護師・介護職員をはじめとした医療・介護の担い手を増やし、国民誰もが、いつでも、どこでも、安心して十分な医療や介護が受けられるような体制を、国と自治体の責任で充実させることである。毎年過去最高額を更新する軍事費予算や、不要・不急の大型開発予算の見直し、大企業や資産家への適切な課税などで、国民が安心して暮らし続けるための予算は確保できるはずである。
日本医労連は、国民と共に医療・介護要求を掲げ、引き続き地域医療を守る運動に全力を挙げる決意である。
http://irouren.or.jp/news/814c9d47838fabbdb0da5a4e4d4cfc51b492f02c.pdf

 

この記事を書いた人