社説 連合結成30年 労働者の権利守る自覚を
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熊本日日新聞 2019/11月26日 07:18
日本労働組合総連合会(連合)が今月、結成から30年を迎えた。
労働者の働く環境の整備や生活改善など取り組むべき課題は多い。日本最大のナショナルセンターとして全ての労働者の権利を守る責務をこの機会に改めて自覚し、存在感を示してもらいたい。
連合は1989年、官公労組が中心の旧総評と民間労組が軸の旧同盟などが大同団結し、組合員数約800万人で発足した。1千万人への拡大を目標に掲げたが、2007年には665万人に減少。「30%台回復」を目指した労組組織率も、昨年ついに17%まで低下した。組合員数は今春、17年ぶりに700万人台まで戻したものの伸び悩みは明らかだ。
要因として、パートや有期雇用、派遣といった非正規労働者の増加が挙げられよう。非正規労働者は安く労働力を得たい経営者たちに受け入れられて拡大。その一方で、簡単に雇用を打ち切られる構造も生まれた。
08年のリーマン・ショック後には「派遣切り」で非正規労働者が大量解雇され、社会問題化した。しかし、非正規支援が正社員の労働条件悪化につながることを懸念した連合は対応が後手に回り、社会の批判を浴びた。
連合が国民の信頼を得るには、この時の反省に立ち、職場で苦しんでいる人に向き合い、そうした人たちを本気で組織に取り込んでいく姿勢が一層求められよう。
春闘でも存在感を示せているとは言い難い。不況でベースアップ要求を見送ることも多く、その一方でデフレ脱却を掲げる安倍政権が産業界に賃上げを求めて介入する「官製春闘」が続いた。
残業規制や同一労働同一賃金など政権が取り組む働き方改革も、労組が労使交渉を通じて経営側から勝ち取るのが本来の姿だろう。存在感を発揮できていない現状を謙虚に受け止めるべきだ。
政治的影響力も薄らいでいる。民主党政権が倒れた後、衣替えした民進党も分裂。7月の参院選では立憲民主党と国民民主党に、連合傘下の産別組織の支持が分かれた。脱原発か再稼働容認かで一枚岩になり切れない現状も透ける。政権奪還に向け傘下労組の大同団結と野党結集をどう図るか、神津里季生会長の手腕も問われよう。