【緊急】労基法上の消滅時効改正に向けた12.11緊急集会 (12/11)

【緊急】労基法上の消滅時効改正に向けた12.11緊急集会
https://note.com/yohei_tsushima/n/n94e66eadecbc
つしまようへい 2019/12/11 23:39

連合の労基法上の消滅時効改正に向けた12.11緊急集会が12月11日、連合会館で開かれました。非常に重要な問題なので、集会で勉強したことをまとめました(集会で登壇した連合・仁平総合政策推進局長および古川景一弁護士の話を参考にいたしました)。この問題について拡散していただけますと幸いです。

■何が問題か?
2017年に民法(債権法)が改正されました。改正された民法では、債権の時効期間が5年と10年に統一されました。施行は来年2020年4月から。それは目前に迫っています。
しかし、まだ解決していない問題があります。賃金などの労働債権の消滅時効の扱いです。
現行の民法(2020年3月まで)では、給料にかかわる債権の消滅時効は1年間。旅館や料理店のいわゆる「ツケ」の債権の消滅時効と同じ期間です。
ただ、未払い賃金などを請求できる期間が1年間では短すぎます。そのため、労働基準法は第115条で、労働者の保護を図るために労働債権の消滅時効を2年間としています(退職金は5年)。
さて、その上で、2017年の民法(債権法)改正で、債権の消滅時効期間は次の通り変わりました。

この民法(債権法)改正に伴って、労働基準法第115条の労働債権の扱いをどうするかが大問題となっているのです。

■労使の意見の対立
労働債権の消滅時効に関する問題は現在、厚生労働省の労働条件分科会で議論されています。ここで、労働者側と使用者側の意見が対立しています。
労使の意見対立のポイントは大きく二つ。
一つ目は、消滅時効期間の扱い。未払い賃金などを請求できる期間をどうするかです。労働者側は民法と同様に5年とすべきと主張。使用者側は現行の2年を維持すべきと主張しています。
二つ目は、どの債権を対象にすべきかという問題。いつの時点で生じた債権を対象にするかという問題です。労働者側は、改正後(2020年4月以降)の賃金支払日(賃金請求権発生日)から新たな消滅時効期間を適用するよう訴えています。一方の使用者側は、改正法の施行日以降に締結した労働契約から新たな消滅時効期間を適用するよう訴えています。これに関しては後から見ていきます。

■2年のままか5年にするか
一つ目の消滅時効期間に関して、どこに問題があるのでしょうか。先ほど見たように、民法(債権法)の債権の時効期間は5年もしくは10年に改正されました。一方、労働基準法第115条の規定は現行では2年です。

では、労働基準法を改正せず、消滅時効期間を2年のままにしておいたらどうなるでしょう。労働者保護を図るはずの労働基準法が、一般法である民法の保護を下回るという逆転現象が起きてしまうのです。

使用者側は現行の2年のままでいいと主張しています。その理由は、「賃金債権の特殊性を考えれば民法が改正されたからといっても同じにする必要はない」「データの保存が困難」「業務負担が増える」といったことです。
一方、労働者側は、労働基準法の基準が民法を下回ることは許されないと主張しています。

民法改正後も労働基準法の消滅時効が2年のままだと、例えば、こんなことも起こります。請負契約・委任契約等に基づく就労者の債権の時効は5年になるのに、労働契約に基づき働く労働者の労働債権だけは2年。つまり、労働契約で働く労働者だけが特別に不利な条件で働くことになってしまうのです。労働基準法第115条の消滅時効を2年のまま現行維持することは、労働基準法の基本的性質を根本から覆すような大きな事案です。決して許すことはできません。

■どの債権を対象にするか
二つ目の問題は、どの債権を改正後の対象にするか、ということです。
改正民法の新しい時効制度の適用対象は、法施行日以降に締結された契約によって生じる債権です。法施行日前に締結された契約によって生じる債権については、現行法が適用されます。

建物賃貸借契約に関する家主の賃借人に対する未払い家賃の請求権を例に見てみましょう。家主と貸借人の最初の契約締結日が2020年3月31日以前の場合です。この場合、家主の債権の時効消滅期間は現行法に従って、支払い期日から10年間です。
そして、ここがポイントなのですが、この方法は2020年4月1日以降に契約更新をしても変わりません。最初の契約が2020年3月31日以前だと、契約更新を重ねても債権の時効消滅期間は現行法に従って支払い期日から10年間となるのです。それは、改正民法の新しい時効制度の適用対象は、法施行日以降に締結された契約によって生じる債権だからです。

一方、最初の契約締結日が2020年4月1日以降の場合、家主の債権の消滅時効期間は5年間となります。つまり、最初の契約がいつだったのかによって、適用対象が異なってくるのです。

これをそのまま労働債権に当てはめて見ましょう。すると、2020年3月31日以前に最初の労働契約を締結すると、労働債権の消滅時効期間はいつまでたっても2年間という事態が生じます。例えば、今年新卒採用された新入社員は、無期雇用契約で定年まで働いたとしたら、今後40年にわたって消滅時効期間が2年間のままということになってしまいます。有期雇用契約を更新する場合も同じです。最初の契約が2020年3月31日以前だと、契約更新を繰り返しても消滅時効期間が2年間のままになってしまうのです。

となると、職場には消滅時効期間が2年間の労働者と、5年間の労働者が今後何十年にもわたって混在することになります。これでは職場に大混乱が生じます。
労働側はこの問題の解決策も提起しています。それは、労働契約の締結日とは無関係に、2020年4月1日以降の賃金支払日を新しい基準の適用対象にする考え方です。そうすれば、2020年4月1日以降に賃金支払日が到来した賃金債権には、新しい消滅時効制度を適用することができます。そのために特例法を設けることを提起しています。
職場の中で、新しい消滅時効制度が適用される人とされない人との分断をつくるわけにはいきません。すべての労働者が新しい基準の対象となるべきです。

■いまがヤマ場!世論換気を!
このように民法(債権法)改正に伴う労働基準法第115条の労働債権の扱いには、大きく二つの問題があります(このほか、賃金請求権以外(例・有給休暇)の消滅時効の問題などがあります)が、どちらも働くすべての人にかかわる大事な問題です。
改正民法の施行は目前に迫っています。今が労働基準法改正に向けた大きなヤマ場です。ぜひ労働者のためになる改正を実現していきましょう!

参考:連合「知っていますか?消滅時効」
https://www.jtuc-rengo.or.jp/shoumetsujikou2019/
 

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