東京新聞【社説】残業代未払い セブンは経営の刷新を (12/12)

【社説】残業代未払い セブンは経営の刷新を
https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019121202000168.html
東京新聞 2019年12月12日

 セブン−イレブン・ジャパンが残業代未払いを放置していた。二十四時間営業問題やスマホ決済廃止に続く不祥事だ。企業統治が大きく揺らぐ中、解体的出直しを図るしか生き残る道はないだろう。
今回、労働基準監督署の指摘で発覚した残業代未払いは、遅延損害金を含め約三万人分の四億九千万円。ただこれはデータの残る二〇一二年三月以降の数字だ。
そもそも未払いについては〇一年に労基署から指摘を受けていた。セブンの説明だと、その際に計算式を間違え労働基準法に合わないままの状態が続いていた。さらに〇一年以前の未払いについても対応していなかった。
未払いは一九七四年に第一号店が開店してから続いていた恐れもある。未払いの総額については永松文彦社長は「現時点では分からない」としている。四十五年にわたり正当な賃金を払わないまま労働者を雇用していた可能性があり、もはやあきれるしかない。
この間、歴代の経営陣は残業代の支払いに問題があるとの指摘を受けながら修正できなかった。従業員への賃金の支払いは企業社会の基本だ。問題への取り組みが極めて甘く、経営者としての資格に疑問を持たざるを得ない。
セブンは今年二月、時短営業をめぐり店主と対立。長時間労働への視線が厳しくなる中で多くの批判を受け、前社長が辞任に追い込まれた。七月にはスマホ決済「7Pay」で不正利用が発覚してサービス自体をやめた。先月には本部が店主の権限を無視しておでんを発注する問題も発覚した。
今後、過去に働いていた人から未払い分の請求が相次ぐ展開も否定できない。セブンはグループ企業(セブン&アイ・ホールディングス)の稼ぎ頭だ。だが経営が困難に直面することも覚悟すべきだろう。
セブンなどコンビニは、東日本大震災の際に被災地へ率先して物資を運ぶなど消費者の信頼を築いてきた。だがセブンの相次ぐ不祥事は、その信頼さえ傷つけかねない深刻な事態を招いている。
永松社長は月額報酬の10%を返上すると発表した。その期間は三カ月である。これで消費者の信頼を取り戻せると考えているのなら、判断を見誤っているとしか言いようがない。
コンビニはさまざまな料金支払いにも利用され公共性も高い。外部からの人材登用も視野に入れた経営体制の抜本的改革を早急に求めたい。
 

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