真っ当な労働組合が孤立している」 関西生コンが弾圧されるのはなぜか<佐高信×木村真 (2/7)

「真っ当な労働組合が孤立している」 関西生コンが弾圧されるのはなぜか<佐高信×木村真
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2020.02.07 HBO

 連帯ユニオン・関西地区生コン支部(関西生コン)の組合員が述べ81人も逮捕される事件が起きている。なぜ関西生コンだけが弾圧されるのか、今後どのような支援が必要なのか。ジャーナリストの佐高信さんと大阪府豊中市の木村真(きむらまこと)市議に話を聞いた。

木村真市議が昨年11月に声明を発表

――大阪の状況を教えてください。

木村:関西生コンへの弾圧が始まっても、全労協系など関西生コンの支援に動いてくれるだろうというところしか支援してくれない状況が長いこと続いていました。しかも関生はこれまでに何度も弾圧を受けてきたので、「あぁ、またか」くらいの雰囲気もあったんです。なので当初は支援の輪があまり広がらなかった。

木村真市議

 しかしいつまで経っても弾圧が終わらず、逮捕者の数も尋常じゃなくなってきました。武建一委員長も逮捕されたきりで出てこない。そこでだんだんとこれはいくらなんでも本気で対抗しないといけないという風になってきました。

――そうしたなか、木村市議は昨年11月7日に抗議声明を発表されました。この声明には、全国23都道府県の125人が名前を連ねています。どのような経緯で発表されたのですか。

木村:マスコミが全然報道してくれないことに危機感を覚えたんです。報道があるとしても、産経新聞などが警察発表を垂れ流すだけ。

 森友学園のときも、裁判に踏み切ったら報道してくれたのですが、それまでいくらマスコミに情報提供しても取り上げてくれなかった。もちろん記者の人は興味を持って話を聞いてくれるのですが、ただ怪しいというだけでは、なかなか報道に結びつかないんです。でも提訴して、記者会見をしたら、朝日新聞を筆頭に、大きく取り上げてくれた。

 関西生コンについても、何か動きを作れば、マスコミも取り上げてくれるんじゃないかと思ったんです。実際、記者会見については、朝日新聞大阪版が11月8日付できちんと取り上げてくれました。

 やっぱり「これはおかしいな」と思っている記者がいても、なかなか記事にしにくいんだと思います。こちらからアクションを起こして、報道しやすいようにするのが大切だと痛感しました。

木村市議への嫌がらせ?

――木村市議は、森友問題をいち早く告発したことで知られています。関生への弾圧に対しても、先頭に立って抗議をしている。嫌がらせを受けたり、活動を妨害されたりすることはありませんか?

木村:インターネットにむちゃくちゃに書かれるくらいで意外となかったですね。電話や手紙は激励がほとんどでした。

 ただ、これは関係あるのかないのかわからないけれど、2016年の5月ごろから森友問題についていろいろと調べ始めたんですよ。10月くらいからは地元でビラ配りもしていたんですね。その年の年末に地元のMBS毎日放送が、僕の政務活動費の使い方がデタラメであるという放送をしたんです。

 違法な点もなく隠したわけでもないのに、僕が勉強のためにたくさん書籍を購入していることについて「この本は豊中市政と何の関係があるんですか」とか「この本でどんな質問をしたんですか」とか聞いてきたわけです。僕は「直接質問に使う以外の本も参考のために購入しますよ」と説明したんですけど、オンエアされた放送を見たら「確かにこいつとんでもない奴やな」って感じがするようなものになっててね(笑)

 たかがこれくらいの問題で、公共の電波を使って5分間も特集するというのは、やっぱり何か意図があるとしか考えられないと思って、あるとしたらその年の10月から僕が森友のことで動き始めていたので、もうこれしか考えられないんじゃないかと。

真っ当な労働組合が孤立している

佐高信さん

――なぜ関西生コンだけが、苛烈な弾圧に遭っているのでしょうか。

佐高:労働組合というものが、闘わないものになってしまっている。だから労働組合として当然のことをしているだけで目立ってしまう。関生が突出しているように見えるけれども、周りが全部水没しちゃっただけなんだよな。本来は、関生が普通なのよ。何も特殊なことはやっていないと思う。

木村:関生の場合は相手方の企業が一昔前で言えば暴力団とつるんでいたような連中ですから、スト破りの時も暴力的で激しいスト破りをしてくるような連中が相手になるわけです。

 お行儀よくしていてはとても太刀打ちできませんから、関生にも荒っぽい面はありますけれども、要求を突き付けて決裂すればストライキをしたり、抗議行動をしたりするのは、これはもう、まったくの当たり前のことです。

佐高:だからその「荒っぽい」っていうのも、向こうがあっての反作用だから。こっちが特に荒っぽいわけじゃなくて、向こうが労働法とかそういうものを全部無視するから、ということなんですよね。

木村:だから本当に「威力業務妨害」(編集部注:関生の組合員は「威力業務妨害」などの嫌疑で逮捕されている)なんてまったく馬鹿げていると思います。要するに威力をもって業務を妨害するから労働組合としての力になるんです。それを労働組合法上、民事上・刑事上免責されることになっているわけですからね。

 やっぱりまとまった数でストライキすれば、工場での生産がストップするとか、極端に落ちるということが起きますが、それが労働組合の力なわけだから、「そんなもん犯罪や」って何を言っているんだろうと。

 議員声明のなかでも触れましたけど、今までは生コンの製造メーカーっていうのは中小零細がほとんどで、セメントを買う時は大手セメントから高く売りつけられ、生コンを売る時になったらゼネコンから安く買い叩かれる。収益が上がらない構造になってるわけです。そういう中で文字通りの水増しの問題、シャブコン(編集部注:水を多く混入させた劣悪なコンクリート)の問題も出てきていた。だから労働組合が適正価格を維持することによって、そういう粗悪なコンクリートが作られるのを防ぐ必要があるんです。

 ただ、関生がそうした活動をしてきたからこそ、大手セメントやゼネコンは中小零細の生コン会社に対してやりたい放題やれなくなってきている。中小企業を協同組合に束ねて、共同受注・共同販売っていう形で、大資本のやりたい放題にさせないっていう、そういうタイプの運動は資本の側としては絶対許さないというのもあるんでしょう。

連合加盟の組合や日教組にも支援してほしい

木村:そもそも労働組合の組織率が17%とかになっちゃってるし、組合の多くがストライキなんて20年も30年もやってない。そうすると関生が普通のことをやっているだけで突出してしまう。

 繰り返しになりますが、それでなかなか支援の輪が広がらないわけです。連合加盟の労働組合なんて、ほとんど素知らぬ顔という状態です。何の問題でも、こういう弾圧や異常事態に対しては、日ごろの対立関係は一旦脇に置いて支援するっていうのが当たり前だと思うんですけどね。

佐高:日教組もストライキを全然しなくなったでしょう。だから僕は執行部に質問したことがあるんですよ。組合費とは別に徴収されている闘争準備資金はどうしているのかって。この積立金をさ、関生にカンパしたらいいのにと思うよ。自分たちが闘争しないんだから、闘争している組合に支援すればいい。

――今後、関生を支援するための具体的な活動は予定されていますか。

木村:とにかく国政政党にきちんと抗議するよう申し入れをしていきたいですね。抗議声明には地方議員からの賛同がある程度集まってるんですが、大半は無所属とか国会では議席のない小さな政党の所属で、立憲民主党の人はたった10人くらいしかいないんですよ。痩せても枯れても最大の野党ですからね、これでいいのだろうかと思います。

 やっぱり国会できちんと取り上げてほしいと思います。国政政党が動けば少しは状況が変わるんじゃないですか。社民党も党としてはあまり動いてくれていないのが現状です。

※日本の労働組合運動の問題点や社会に蔓延する自己責任論については、近日公開予定の続編をお待ちください。

<収録・構成/HBO編集部>

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